第252話・崩れるまで肩車してくれた女の子とボクの絆

 すると、3人の女子高生がキャッキャしながら走り寄ってきて

「写真撮られせてよ、マイカ。すごいよマイカ、男の人を肩車できるなんて」と盛り上がりながらスマホを向けてきた。

「えーーっ、もう体力限界で、目眩しそうなのに。肩車終わりにしようと思ってたところなのにーー、きついよー」

「撮影するからちょっと頑張っててマイカ」と女の子たち。

「ちょっとって・・」

「あれっ? 動画になっちゃってるから。やり直しーー」

「えーーっ、早くしてよー、もう首も痛くなってきたし、重いんだからー」

「ごめんごめん、あれっ、どうするんだっけ動画から写真にするの」

「もうムリー、降ろすよー」

ここでボクが上から脳天気に「動画のままでもいいよ」

「うん、じゃあ動画で。動画だから、マイカそのへんちょっと歩いてよ」

「えーーっ、歩けって、ものすごく重いんだからぁぁ」

 こんな感じで女友達の手柄で、ボクは、へろへろ体力限界の女の子の肩車に限界ぎりぎりまで乗り続けることができている。マイカが倒れるかもしれない崩れるかもしれない、という自分が落とされる危険を感じながらも、ふらふらと揺れる女の子の上に乗ってる肩車にはドキドキと罪悪感、そして女の子の頑張りにすがりつく依存心というか、とにかくいろんな感情のミックス萌えで、こんなぎりぎりの肩車なんてなかなか今後も体感できないだろうなろねってな一期一会感。

 マイカが目眩しそうになってるのに頑張ってくれてるのは、上に乗ってる70キロのワガママ男を落として怪我させないため、これって優しさを通り越して「愛」だよね。もちろん出会ったばかりの女子高生がボクのことを個人的に愛してくれてるなどということは夢見てないよ。ここでいう「愛」とは、女性が生まれながらに持つ母性本能みたいなものというか、そう、自分に身も心も委ねてきた男のことは守ってあげたい、守ってあげなければいけない、という使命感的な・・。

 かなりマイカのふらつきが危なくなってきたので、ボクは両手でかなり強く握るように、マイカの頭に掴まった。この態勢によってボクの体重が前方へ偏ったのか、マイカの上半身が前のめりに腰折れ、ボクは、マイカの背中側にまわしていた両足先をあわてて前に出して、前のめりの転倒に備えつつ、マイカは前のめりに崩れた。ボクは前のめりに落ちたが、ちゃんと両足で着地。

 女の子に乗ってばかりのボクだが、女の子に怪我させてはいけないという気持ちは強いのですぐに「マイカちゃん、怪我してない?ヒザとか擦り剝いてない?」と、抱き寄せて確認を。するとマイカのほうも「そちらこそ、高いところから落ちて大丈夫ですか?」と優しいぃぃぃ。こんなにふらふらになるまで乗り続けてしまった小柄な

女の子がこんな優しい言葉かけてくれるって、これは女性としての本能だよね。

 抱き寄せたマイカを抱きしめてみると、もう全身の力が抜けきってる感じのヘロヘロ感で、よくこんなになるまでボクを肩車してくれてたもんだと感激。

「マイカ、重かったでしょ? ありがとね」

「ううん、重かったぁ、でももう大丈夫」と。

一見すると相思相愛の恋人同士みたいかもだが、恋愛がないのにこうしてることこそが価値なんだとおもう。女の子の肩車の絆って素晴らしい。 

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