第251話・桜景色卒業式後に女子高生に肩車してもらう

 地球温暖化のためか、都区内の桜の見ごろは、入学式の時期ではなく、卒業式になりつつあるようだ。3月下旬のある晴れた日、広めの歩道を歩いていると、セーラー服の女子高生数人が、桜の花と一緒に記念撮影をしている。近くの女子高の卒業式が終わったところのようだった。

「みなさん卒業生ですか?」と、とりあえず声かけしてみる。

「私だけ2年生ですけど、他はみんな卒業生です」と1人が答えてくれた。ボクは

「2年生のキミだけちょっとこっち来てくれる?」と。

 卒業生たちは、桜の花と一緒に記念写真を撮りたいのだが、桜の花の位置が高すぎて、一緒に写り込ませられないのだ。その光景を見て、ボクは、撮影者が高い位置に上がって、花びらの隙間から卒業生たちを撮る構図とすることを提案。言葉だけで

説明してもわかりにくいので、とりあえずボクのデジカメで撮って、女の子たちに見せることにする。

 卒業生4人をまず校門前に並べる。そして、ボクは横にいる2年生の女の子をその場にしゃがませる。ボクは片手でデジカメを持つと、当然のごとくというような感じでサラリと、その女子高生の後ろ首のところに跨るように座る。この「当然のごとく」な自然の動きにより、人生経験の浅い女の子は、えっそういうもんなんですか?ーーという戸惑いが、素直に従うっていう行動に。

 ボクは女子高生の上に座って態勢を整えると、しゃがんでる女の子に当然のごとくの口調で「はいっ、気合入れて立ち上がって。肩車できるでしょ」と。女の子の精神状態を迷わせないことが大事。そのほうが、力を集中できるから。

 すると、もくろみ通り、女の子は、そのままスーッと立ち上がってくれ、ボクの

身体を持ち上げて、正しい肩車姿勢に立ってくれた。それを見ていた卒業生たちから

「マイカ凄い、男の人を肩車できるんだー」と。

 とはいえ、身長155くらいと思われる高校2年生のマイカにとっての、70キロ男の肩車は、かなりぐらぐらとふらついていて、最初っから大変そうだった。ボクは

「やや右へ前のほうにちょっと歩いて移動して。そこに、いい感じの桜の花びらがあるんで」

「歩けるかな・・」と呟きながら、マイカは一歩を踏み出すと、歩けることがわかり、そこからはすたすたっと5~6歩。「はいっ、そこで止まって」と上から指示。そんな感じで、桜の花を前景にして卒業生たちをいい構図で撮れるところから何枚か撮影し、「いい感じに撮れたよ。見てみる?」と言うと、卒業生たちが、ワイワイキャッキャッと集まってきて確認する。

「あっ、これ凄くいいかも、私のスマホでも撮ってほしい」と、1人が、肩車上の

ボクにスマホを手渡してくる。スマホで撮って渡すと、次の女の子からも「私の

スマホでも撮ってください」と。

 こうしてボクは、高校2年生の女の子の肩車に乗り続けながら、スマホを受け取って撮影してスマホを返すことを繰り返すことになった。ボク目的はもちろん、女の子の肩車に乗り続けることなので、これは、最高の役回りをゲットしたとになる。遠くにいた卒業生たちも、この光景に気づくと「私も撮ってーー」と寄ってくる。こうなってくると、男を肩車させられてる女の子マイカとしても、この肩車はいつまで続くんだろう、という不安がよぎるのは自然だろう。

「あのー、いつまで肩車を・・なんですか? もう、ふらふらでツラいんですけど、

一度降りてもらってもいいですか?」と。

「うんうん。でも一度降ろしちゃうと、またボクのことを持ち上げるの大変だよ。

だからこのまま続けよう。ボクも乗ってるまんまのほうが楽だし・・」

「えっあっ、いつまで。。もう限界ですぅぅ」

「頑張れガンバレ」

「お願いです、もう降ろさせてください・・」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る