第225話・目で見てわからない色気放つ女性のおんぶ

 冬の寒々しいちょっとした平凡な公園を、ただふつうに紺色のダウンジャケットを着た女性が歩いているという光景だった。冬は防寒具を着込んでしまうため、女性の色っぽいボディーラインが消されてしまう、という残念感がある。

 しかしそんな中、ボクの視線の先10メートルくらいを行く紺色ダウンジャケット女性の横からのフォルムには、なぜなのか、なにがなのか、わからない色気があった。色気のポイントがわからないのだが、なにしろ色気がある。

 ボクは駆け寄って女性に、そのような気持ちを話した。当然ながら、いきなり

そんなこと言われた女性の側は「????」である。

「困惑させること言ってすみません。貴女の色気のポイントを探り当てたいので、

後ろ姿と横からでいいので歩いてる動画を撮影させてください。もちろん、あなたとボクで観たあと動画は消去してもいいです」

「はい、そこまで言うなら・・、私も色気なんて言われると興味あるし」

 で、撮影後の動画を2人で確認してみたのだが、ぜんぜんいろっぽい感じなんかに撮れてないーーーーあれっ、なんでだろ、ヘンだなぁーー。このお洒落な肩掛けバッグとのコントラストがギャップ萌えを産んだのかなぁ、いろいろと考えてみるが、

どれも、しっくりとは納得できない。

「あのー、もう1つだけちょっとしたお願いがあってもいいですか?」

「はい、なんですか?」

「貴女の色気の素、貴女のボディラインにあるという気がして。でもダウンジャケットでボディラインが見えない。なのにボクの第六感が貴女の素敵なボディラインを感じたんではないかと。それを体感として確認したく、つまり、あの、ボクをおんぶして歩いてみてください」

「えっ、おんぶ? なんかそれ変ですよ、なんでおんぶなんですか?」

「ボクの身体全体で、貴女のボディラインを感じてみたいんです、乗りますよ」と言うと同時に女性の背中に飛び乗ると、彼女はちょっとよろけつつもガッチリと受け止めてくれたーーボクの両足を彼女は両腕でホールドしてくれた。

 乗った感触としてまず感じたのは、ダウンジャケットのもっこり感からは想像できなかったほど、この女性の身体は細い。ボクが両手を乗せている彼女の両肩も、

おもっていた以上に華奢だった。しかしそんな細身で華奢なわりには、ボクのいきなりのおんぶを受け止めてくれた安定感・・。

「男をおんぶしたことありますか?」と訊いてみると

「息子はおんぶしたことあるけど、大人の男は、あなたが初めてです」

「あーなるほど、子供のおんぶで、おんぶ慣れしてて、こんなに安定してんですね」

「安定してますか? 私にとってはこのおんぶは重くて重くてキツいんですけど」

「乗り心地安定してる、いいおんぶですよ。ちょっと公園内、歩きまわってみてくださいよ。歩く揺れと振動があったほうが、貴女の色気のボディラインを感じ取りやすいんで・・」

「感じ取りやすいって・・・いったい私はなんのためにこんなことを・・」

細身の人妻さんの歩くおんぶで揺れが繰り返されるにしたがって、ボクの両足の内太ももは、女性のウエストのくびれラインを感じ取り、なるほど、この、出るところは出てて引っ込むところは引っ込んでる体形が、ダウンジャケットで覆われていても、ボクにその色気を訴えかけていたのだろうか、と。

 それと、子供のおんぶによって、こんな華奢な女の子がおんぶ慣れした、ベテランおんぶガール化していて、70キロのボクをこうして気持ちよくしてくれてる、そういう素質ある身体なんだよというオーラがダウンジャケットの下から発信されていたのを、おんぶフェチのボクの感性がキャッチしたのか。

「もうおんぶ終わりにしますよ」と女性に言われ、

「あっ、あそこのベンチまでおんぶしてくれたら、あそこで降ります」

「あそこまで歩けってこと? まったくなんでよ」と不満を言いながらも、そのベンチに向かって歩き始めてしまうところは、子育てで身につけた母性か。やや急ぎ足になってくれたのは、たぶん思いおんぶ仕事を1秒でも早く終わらせたいからだろうけど、急ぎ足でボクをゆらしてくれる、この振動が悦楽でたまらない。

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