第221話・おんぶで乗り続けると女の子は使命感を持つ
ミユキとボクは、大通りを渡る交差点の信号が青になるのを待った。そして青に
なったので、ボクはミユキの両肩に自分の両手を乗せて「じゃあ乗るよ」と。
「ホントに乗るんですか? こんなふらふらな女の子に・・」と言いながらも、乗られる体勢に身構えてくれている。
「うん、乗りたい、気持ちいいし楽ちん楽ちんなんだもん」と言いながら、ミユキの背中に飛び乗ると、ミユキはバッチリと受け止めて歩き始めてくれた。この小説でも何度も書いているように、ボクは、バテバテでへろへろに疲れてる女の子のおんぶに残酷とも思えるほど繰り返し乗ってきてるわけだが、それは、状況がどう変わろうが、おんぶさせ続けることによって、女の子というのは「私はおんぶするのが役目」てな使命感のようなものをインプットされるのだろうか。ここまでへろへろになってるのに、よくぞボクのただのワガママのために頑張ってくれるもんだ、と思うほどに、最後の最後まで頑張ってくれちゃう。
たぶんこの「私はおんぶするのが役目」という使命感は、脳の判断によってなされるのではなく、女の子の身体が、おんぶ仕様の形なり感触に変化するのだと思う、というボクの身勝手論。だって女の子の身体って、乗れば乗るほど、乗り心地が気持ちよくなるんだもん。。
今回の、この酔っぱらっちゃって女の子におんぶも、ボクの「歩きたくない」てな甘えであって、歩けないわけではない。この「助けてもらってるのではなく、甘えさせてもらってる」の点が、ボクにとっては萌えポイントなのだ。女の子の側としては「自分の足で歩きなさい」ってボクを見捨てることはできる。にもかかわらず、汗まみれになりながらも、ボクに楽ちんさせて気持ちよくするために・・女の子の持つ「甘えられたら頼られたら、こんな理不尽なことでも断れない」というサガ。
ミユキは
「クロさん、歩けないわけではないでしょ、もう」
「うん、そうなんだけど、ミユキのおんぶのほうがいいの」
「おんぶしてる私がどんなに大変かわかんないの? わかんないから乗ってられるんでしょ」
「うん、わかんないからかも」
「もう、ひどいよ。女の子にこんな力仕事させて、自分は楽ちん楽ちんなんて」
「あっ、信号点滅始まったよ、急いで。走れる? 渡り切らないと・・・」
「おんぶのまま走れなんて、ひどいよー」と言いながらも、ミユキは、駆け足になってくれた。6車線大通りの横断は、けっこうな距離感だ。
真夜中のそんな横断は、オレンジ色のライトに照らされてる感、ボクたちの横断完了を待つ数台の車のヘッドライト、女の子の加速によって、冬の夜空の寒風を顔に
向かい風として感じる爽快感。なんて素敵な青春なんだろう。
行きずりの女の子とお酒飲んで酔っ払ったら、女の子がおんぶしてくれ、しかもおんぶで走ってくれて風を感じ、女の子はアパートまでボクを運んでくれてる。なんて素敵な青春なんだろ。
ミユキは横断しきって、歩道に上がろうとしたが、その歩道の段差をおんぶしたままでは登れないようで
「あっこの段差がダメ、登れないよー、クロさん降りてー」
これは仕方ない、、華奢な女の子の力の限界だろう、ということで降りてあげた。ここからは、先に行ってしまってるマスミのアパートは近かったので、ボクも自分の足で歩いた。マスミは部屋を片付けていたが、そのまますぐに部屋に入れてくれた。
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