第220話・2人組女子どっちがボクをおんぶかでクチ喧嘩に
ミユキは、ボクをおんぶして50メートルくらい歩いたところで、かなり疲れこんで立ち止まってしまったが、座り込むほどではなかったようで、おんぶから降りたボクは、横からミユキを支えた。冬の夜でけっこう寒かったのだが、ミユキはおでこや首筋に汗ばんでいた。
「おんぶしてくれて、ありがと。大丈夫?」
「ハイ、大丈夫です」
「大丈夫ならよかったぁぁ。じゃあ、乗るよー」
「えっ、大丈夫って、そういう意味じゃなくって・・」と泣きそうなかすれ声で言うミユキのつぶやきを聴こえないふりして、ボクは、ミユキのおんぶに飛び乗った。
「あーー、やっぱり、かわいい女の子のおんぶって最高ー。ありがとね、ミユキ」と言いながら、ミユキの細い腰のクビレをボクの両足でギュッと挟んで締め付けると、ミユキは「うっ」と言いながら、トントンと歩き始める。
「やっぱり、ミユキのおんぶ、気持ちいいなぁ。楽ちんだしー。ほんとに、ありがとね。こんな素敵なおんぶしてくる女の子を彼女にしたいぃぃ」
ミユキは、能天気ハッピーなボクの会話なんかに返してる余裕がないのか、無言のままトコトコと歩いてくれてる。その一生懸命さに、ボクはもう萌え萌えの悦楽。
女の子って、なんでこんなに優しく尽くしてくれるんだろう。
そんな幸せに浸っていると、ミユキは、さっき歩いてくれたよりもかなり短い距離のところで「もうムリ、降りてください」と。大通りを渡る交差点まで10メートルくらいの中途半端な歩道上だったので
「あの交差点まで頑張ろうよ」とボク。
「はい、わかりました」とミユキは小さな声で言うとそれに続いて、腰の力を振り絞って、ボクの身体を高い位置にポンっと跳ね上げてくれた。
「あっ、うん、イイ感じイイ感じ。乗ってる高さが楽な位置になったよ」とボクは、ミユキの髪をなぜなぜした。それからのミユキのトボトボ歩きによる振動が華奢な女の子が頑張ってくれてる感びんびんで、もう堪らない。交差点に着いても、おんぶから降りたくなくなってしまったよ、ごめん・・ミユキ。。
なんとか交差点のとこまでボクをおんぶしてくれて、呆然と立ち尽くすミユキが
「降りてくれないんですか?」と。
「ミユキのおんぶ乗り心地いいから、降りたくなくなっちゃったぁぁ」
「えっ、お願いします」
「うっそだよー、降りるよ、ありがと、ここまでおんぶしてくれて」
交差点のところは歩道が広めになっていたので、しばらく休むことにした。ミユキはこの冬の夜空なのに、けっこう汗をかいていて、あらためて、女の子にとって、70キロの男をおんぶして歩くことの重労働さを実感。
「ミユキが次のおんぶできるまで体力復活するまで休もう。でも汗かいた身体が冷えて風邪ひいちゃうのもマズいから、次の青信号で渡る?」
「えっ、まだ、乗るんですか?」
「うん、最後まで、おんぶで行きたいな」
「こんなふらふらの女の子に本気で乗るんですか?」
「うん、乘っていきたい。もしミユキがダメなら、マスミでもいいよ」
「マスミ、交代してよ」とミユキ。
「マスミでもいいよ、なんて残り物みたいな言われ方したから、私はおんぶしたくない。クロさんは、ミユキのおんぶがいいんでしょ。私だって3人分の荷物持たされてるのよ」
「荷物なんか合わせても10キロにもならないじゃない。私は70キロを背負わされてここまで来たのよ。クロさん、この不公平、どう考えてるのよ」
「ボクは好きな女の子におんぶしてもらいたいという自然な考えで。でももしキミたちの女同士の友情で、マスミが交代しておんぶしてくれるなら、ボクは喜んでマスミに乗るよ」
「マスミー、交代してよ、お願い」
「やだ、やっぱりその言われ方イヤだ。ミユキが最後までおんぶすればいいのよ。
私は先にアパート行って部屋片づけてるから、あなたたちは、ゆっくりきて」と言うと、交差点を走って渡っていってしまった。
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