第219話・女の子の親切心に覆いかぶさるようにおんぶ

 終電間近の夜遅め、郊外へ向かう通勤電車内で、たまたましばらくの時間、近くに立っていた2人組の女性に声を掛けてみると、2人は笑いながら

「私たち、次の駅で降りるんで・・・」と。ボクも話を合わせて

「えっ、ボクも次の駅なんですよ。駅近でちょっと飲もうよ」と。

 こんなアイデアもセンスもないナンパでうまくいくとは思ってなかったのだが、

すんなりオーケーってことになり、ボクは嬉しくてすぐに酔いがまわってしまった。

居酒屋を出て「バイバイ、ありがと、楽しかったよ」と後腐れなく分かれるのが、

カッコイイことくらいはわかっているのだが・・。

「あっ、もう終電ないっか」とボク。

「えっ?」と女の子。

「実はボクこの駅ってのウソだったんです。もっと先の○○駅で」

「○○は、タクシーだと、かなり遠いわね」

「もし可能なら、泊めてください・・・すみません・・」

「えっ? 泊めてって私のあの狭いアパートに・・」

 女の子2人はちょっと相談を小声でしてから、オーケーしてくれた。ボクは、

女の子たちの優しい「オーケー」の対応にトロけてしまい、酔いがまわって足元が

さらにふらついてきちゃった。2人は、そんなボクに両側から肩を貸して支えて歩き始めてくれた。女の子って、なんて優しいんだろ、これだから、ボクは女の子大好き人生を辞められない。

 しばくそんな感じで歩き進んだところで、ボクは「ちょっと止まって休ませて」と。で、体格が華奢なほうのミユキちゃんの荷物をボクが、体格ガッシリめのマスミちゃんに持たせる。ミユキちゃんは「えっ、大丈夫よ、自分のカバンくらい」

ボクは「いいから、いいから」と言いながら、ボクの荷物も、マスミちゃんに持つように手渡す。当然ながら、マスミからは

「えーーっ、なによこの不公平感、差別してるー、わたし荷物全部持たされてーー」

 手ぶらになったミユキは、戸惑っている。

で、ボクは、ミユキの背中側に回り込んで、両手を彼女のの両肩に乗せて

「ミユキちゃん、乗るよーー」と。

「えっ???? 乗るってどういうこと??」

「おんぶして」

「えっ、男の人をおんぶなんてムリかと」

「大丈夫、乗るよ」ともう一回告げて、ボクは、ミユキの華奢な背中に飛び乗ると、ミユキは2~3歩前にトントンとよろけ進みながらも、両腕でボクの両足をホールド、ボクの全体重をなんとか支えてくれた。

「ほら、やっぱり大丈夫だ。ミユキちゃん、おんぶできるじゃん」

「えっでも、これで私ん家までなんか歩けない、重くてもう限界ですよー」

ボクは

「2人で肩支えてくれたのも助かったけど、おんぶの方が楽なんで、このままおんぶで、お願いね。ああ~~女の子のおんぶは乗り心地も気持ちいいし、自分の足で歩くより楽だし、、ありがたい」

「おんぶさせられてる私は、これキツいです」と泣きそうな声で言うミユキだが、

ボクをおんぶしてトボトボとは歩いてくれてるのが、これまた堪らない幸せ。こういう、成り行き親切心な女の子に覆いかぶさるようにさらに甘えるのがボクは大好きだ、という悪い性癖の男だってことはわかっているのだが、ついつい目の前の優しい女の子に自分の全体重を預けたくなってしまう。

 体格ガッシリな方のマスミではなく、華奢なミユキのほうに乗りたくなってしまうのも、ボクの悪い癖だとはわかっているのだが、

「だって、好きな女の子の方に乗りたいんだもん」と。そんなこと言ったあとで

「さっき荷物持たされて不公平だって言ってたよね、マスミちゃん。交代してもいいよ」なんて言っても「ミユキのこと好きだから、ミユキのおんぶがいいんでしょ。私は3人分の荷物運ぶ係でいいですよ」と。

 ミユキはしばらく歩いてくれたが「ちょっと一度休ませてください」と。

「休んだあとも、また、おんぶしてくれるって約束するなら、降りてあげる」

「えーーーっ、このあともおんぶなんですか?」

「うん、おんぶしてくれないんだったら、ボク降りたくない」

「わかったわよ。おんぶするから、とりあえず今は降りてくださいな」

「はい、約束してくれたから降りるね」

「ふーーーー」

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