第213話・ひさびさにハイヒール女性のおんぶに乗った
交差点に着く手前で信号は赤になってしまったので
「信号赤になっちゃったから止まって」と、ボクは、官僚女史のおんぶ上から指示。
女史は、ボクをおんぶしての歩きが意外とキツいのか、下向き加減で歩いてるため、信号を見ていない。ゆえに、歩けも止まれも、ボクがおんぶ上から、はっきりと命令したほうがよさそうだ。おんぶ上から女史に命令、なんて考えただけでも萌える。
するとマキコから「赤信号待ちの間も、私の上に乗ったままなんですか? 重いんで休ませてほしいんですけど」と。
「いや、このままおんぶしてて。そのほうがボクは楽だし、乗り心地いいおんぶだから気持ちいいんで。ただ立ってるだけなら、そんなに大変じゃないでしょ?」
「ハイヒールだから、立ってるだけでも、こんな重たいの担いでると、足痛いんですよ。男の人はハイヒールの苦痛わからないんでしょ」
「痛いのにごめんなさい。でもおんぶはこのままで青信号待ちましょう」
確かにボクには、ハイヒールで70キロの男をおんぶして歩く苦痛は経験したことないし、わからない、しかし、足痛いだろうな、との想像はつく。靴擦れしちゃう
合わない堅い靴で歩くはめになったような痛みだろう。いや、その痛い足でただ歩くだけでなく、70キロの男をおんぶだなんて、そりゃ大変だろう、と想像はつく。想像がつけばつくこそ、女性の痛みがボクの幸せを支えてくれてるという萌え。
足が痛いのに男をおんぶして歩く女性の心理って、どんなんなんだろうか。能天気に上に乗って「楽ちん楽ちん、気持ちいい、悦楽で幸せ」なんて言いながら女の子の髪をいじってる男を憎んでいるのだろうか。それとも、自分の苦行による頑張りのおかげで、上に乗ってる男が悦楽の幸せになっていることを、自分の苦行も他人の役に立ってるのなら報われる、なのか。
少なくとも、おんぶしてくれたけど、なにもいいことも楽しいこともなかった、と言われるよりは、自分の身体の上で喜んではしゃいで感謝してもらえたほうがいいよね、というわけで、ボクは女の子の上に乗ったときは、思いっきり幸せと感謝を伝えることにしている。
そんなこんなな想いを巡らせながら、マキコのおんぶ上で悦楽を堪能していると、歩行者信号が青になった。
「マキコ、青になったよ。右斜めあっちのほうへ渡って」
「なんでワタシこんなこと命令されなきゃなんないのよ」と言いながらも、ボクをおんぶしたまま、車道に歩みだしてくれた。ホンネでは、好きでもないしエリート婚活の役にも立たない冴えない70キロの男なんかをおんぶして歩きたくなく、今すぐにでも捨てちゃいたいかも。だけど、青になったばかりのスクランブル交差点には大勢の人の波の動きがあり、その波に押されるような形で、マキコはボクをおんぶしたまま、やや軽快な足取りで歩み出さざる負えない流れになっていたようでもある。
マキコのハイヒールおんぶ歩調としては、やや速めの歩き方になってしまったのは、雑踏の流れに合わせようとしたから。こういうところが、エリート官僚さんっぽくて、ボクの萌え心をドキドキワクワクさせてくれた。ボクは今、エリート官僚女史に乗ってしかも命令してるんだと思うと、この世の勝ち組気分に高揚。
しかしこの早歩きが災いしてしまい、マキコは
「足が痛い、ごめんなさい、ここでおんぶ終わりにしてください」と。エリート官僚女史さんにこんなふうに頼まれてしまったら、さすがのボクも降りるしかない。しかし女史は、ボクをおんぶして歩道までは送り届けてくれた。女史としてのプライドか。やりかけた仕事は、とりあえずキリの良いところまではやる。こういうことがあるから、おんぶフェチとしては、プライド高そうな女に乗りたくなっちゃう。
今回は、紹介者友人君が、ボクたちのおんぶ姿を動画撮影してくれていたので、
3 人で近くのデニーズに入って、動画を観ることにした。マキコは
「えーーっ、動画撮影してたの? 私が男の人をおんぶさせられてる動画なんかイヤだ。私は、おんぶしてもらいたい側なのに」
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