第211話・限界越えおんぶで本能目覚めたワガママ女子

 体力的にへろへろにバテてる女の子に、おんぶ気持ちいいから、という贅沢な理由で、おんぶしてもらおうとするボクのような男は、女の子の敵かもしれない。

しかも、その女の子がこうまで疲労困憊してしまったのは、ボクをおんぶしてきてくれたから。それでもどうしてもボクは、さらにまた残りの約10分の道のりを、キヨカのおんぶでバス停まで行きたかった。

 それは、体力使いきってへろへろのキヨカに、とてつもない色気を感じてしまっているから。疲れてる女性は色っぽい。しかも彼女の疲れた原因が、ボクを気持ちよくさせるためのご奉仕によるなんて、こんなシチュエーションの女性が目の前でふらふらしてる、もうたまんない。

「キヨカ、大変だとは思うけど、乗るよ」と。

「ほんとに乗ってくるなんて・・、こんなへろへろの女の子に・・」

 疲れてる女の子の身体は柔らかくなっているので、乗り心地の肌感触がしっとりと受け入れてくれてるようで、愛されてる感、暖かみをジワッと感じる。

「歩けるでしょ、歩いてよ。キヨカの歩く一歩一歩の振動好きなんだから」

「うん」

 しかし2分ほど歩いたところで

「ごめんなさい、やっぱりもうダメ、立ってることもできない」と、キヨカは、

しゃがみこんでしまったので、ボクも降りた。道端に2人で座り込んで休むことにした。ボクとしては、キヨカが「ごめんなさい」という言葉を一言目に言ってくれたことに萌えた。

 ごめんなさいは、冷静に考えたら、ボクがいうべき言葉だろう。「キミがこんなに立てなくなるまで、乗り続けてて、ごめんなさい」と。にもかかわらず、体力使い切るまでおんぶしてくれた女の子の方から「貴方を最後までおんぶしてあげられなくて、ごめんなさい」と。これはもう、キヨカちゃん自身が、自分は、この男のおんぶガールだと、認識しているってこと。

「そろそろ行こうか」

「うん、ちょっとは回復したみたい」

「良かった回復して・・。じゃあ乗るよ」

「また乗るんですか。もうほんど歩けないですよ、おんぶしてなんて」

「何度休んでもいいから」言いながら、棒立ちしているキヨカのおんぶに飛び乗ると、キヨカはボクの全体重は支えてくれたものの、体力へろへろをわかりやすく表現しているがのごとく、首をうなだれて下を向いていた。

「歩ける?」

「うん、頑張ります」と、消えそうな声で。

 さすがのボクも、これはまずいところまで、限界を越えさせちゃったと悟り、そそくさと彼女のおんぶから降りた。

「こんなんなるまで能天気に何度も乗り続けてて、ごめんなさい」

「わたし・・抵抗力もなくなるほどバテちゃってて、おんぶしたくないですと言えなくなっちゃってて、人間弱くなるとこうなのかしら」

「ボクの大切なおんぶガール、大切にするよ」

「わたし、クロさんを気持ちよくするためのおんぶガールなの?」

「なってほしい」

「つい2週間前までは、私がおんぶしてもらう側だったのに、今はこうして、男の人を、おんぶする側になっちゃうなんて・・、なんか悲しくなっちゃう」

「乗っていい?」

「はい」

 おんぶさせられすぎたことによって、ワガママだった女の子が、こうも正反対の

性格に変ってしまった。女性が本能的に持つ母性というか優しさというか、人に尽くしたい心というか。これだから、ボクは、女の子大好き人生をやめられない。

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