第183話・人混みの中で立ち止まりおんぶしてくれた女性

 ひらひらファッション女性はボクをおんぶして、信号交差点に向かって歩いてくれたのだが、人混みでなかなか前へ進めない。そんな人混みの人間渋滞の中で、女の子におんぶしてもらっていて、目線の高いところから、周囲を見下ろしているボクは、まさに優越感そのもの。

 女の子におんぶしてもらえてる気持ちよさに加えて、この人混みの中で高い目線という気持ちよさ、自分の足で立ってないという楽ちんさ、女の子の優しさや暖かさを肌で実感しつつ。目の前には、かわいいセミロングに整えられた女の子の髪があり、おんぶ上のボクにとっては、髪の毛も胸も触り放題な楽園天国。。

 女の子のおんぶで幸せをいっぱい感じるには、歩いてもらって振動と揺れをもらうことがすべてではなく、こうして立ち止まり状態でも、その環境によっては、こんなに幸せになれる。人混みの中での信号待ちが、こんなにも「この幸せな時間が永遠に続いてほしい・・時間よ止まれ」と感じたのは初めてかも。

 しかし人混みの中で70キロの男をおんぶさせられて立ち尽くしている女の子にとっては、ツラい時間かもしれず、女の子は顔を下に向けてうなだれるような姿勢になっていた。ボクは彼女に訊いてみた。

「重いですか? 大変ですか? 歩かずに立ち止まってるだけでも・・」

「たけでも・・、ってひどいです。上に乗ってる貴方には、下で支えてる女の子が、どれほどの苦行みたいなことさせられてるか、想像つかないんですか?」

「想像はできてますよ。想像できてるからこそ、女の子に乗せてもらってることに、こうも快楽を感じ萌えてしまうんですよ。華奢なかわいい女の子が、苦行のような大変な思いをして、70キロもある男のボクに快楽をサービスしてくれてる、これって、男として最高の幸せ。幸せすぎる、ありがとうね」と彼女の耳元で言いながら、彼女の頭をギュッと抱きしめたというか、両手で握りしめてしまった。

「頭を強く握らないでください、苦しいです。おんぶさせられてるだけでも苦しいのに・・・なんて自分勝手な人なんですか」

「ごめんなさい、おとなしく乗ってますぅぅ」

「乗ってますぅじゃなくて、もう降りてほしいんですけど」

「人混みぎゅうぎゅうだから、ここでは降りれないよ、信号のところで降りるから、そこまで、乗せてって。。大変だとは思うけど、もうひと頑張り、お願い・・」

 女性は、しばらくの立ち尽くしでズリ落ちしてきてたボクの身体を無言でシャンプするようにハネ上げてあげてくれた。上に乗ってるボクとしても、こうして高い位置に修正してもらえたことで、乗り心地がかなり快適になったので、女性のこの気遣い動作に、胸キュン。70キロのボクを跳ね上げる動作も、たぶんけっこう大変かと、華奢な女の子にとっては・・。

 もちろん、女の子は、ボクの乗り心地を快適にするために跳ね上げたわけではなく、おんぶしてる自分がズリオチのままではツラいのでだが、結果的にボクを快適にしてくれてるって点が、萌えポイント高いのだ。跳ね上げてもらえることで、女の子からの「さあ、行くわよ」という、やる気スイッチのようなものを感じてしまえるのだった。

 そしてその、やる気スイッチに続いて、女性は、カツカツと軽快に歩きだしてくれるではないか。軽快なわけないってか、重いワガママ男を背負わされてるんだから。1秒でも早く人混みから抜け出して、おんぶ労働を終わりにしたいからだよね。

 なんだかんだと、ありがとね。すごく良いおんぶだったよ。ブラウスの背中のひらひらファッションがビシャッと潰れちゃってるところに、ボクが彼女に与えた影響の重みを感じ、萌えてしまった。ボクを萌えさせるたの背中ファッションも、ありがとね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る