第174話・ボクをおんぶして不幸になっちゃった女の子

 楽しそうにルンルンと歩いてくれてる女の子のおんぶは、彼女の上に乗ってるボクの身体にもハッピーオーラを届けてくれて、1歩1歩と歩くことから感じる振動のひとつひとつがすべて、ボクを幸せにしてくれるために、女の子が汗だくになって力仕事してくれてる性感マッサージなサービス。

 とはいえ、70キロのボクをおんぶして歩いてくれてる女の子の歩調は、軽やかにるんるん、というわけにはいかず、ズリオチしたボクの身体を、立ち止まって跳ね上げる頻度も高くなり、大変そうだった。でも、このズリオチ修正のポンと上げてくれる女の子の努力には、萌え萌え。

「キミみたいに楽しそうにおんぶしてくれる女の子って、乗り心地最高だよ。重い重いって苦しそうにおんぶしてくれる女の子に乗ってるのもいいんだけど、大変なことさせちゃってるのかなぁ、と罪の意識を感じてしまう。その点キミは楽しそうにるんるんやってくれるから・・」

「なに言ってるのよー。私だって、このおんぶ重いし苦しいし大変なのよ」

「そうなんだぁ。ボクはキミから幸せを分けてもらえてて、気持ちいいし楽しいし、楽ちんだし、つまり、キミが頑張ってくれてるぶんは、ボクがちゃんと幸せとして受け取ってるから、キミの頑張りは無駄になってないよ」

 女の子としては、なんで、こんな男を幸せにするために、自分が、こんな理不尽な重労働させられなきゃなんないのよ、というのはあるだろう。しかし、自分が幸せだから、幸せを分けてあげなきゃ、って思っているのかもしれない。女の子の白いブラウスは首回りと、背中の全面が、そろそろ汗でびしょ濡れになってきてるが、重い男をおんぶして歩くことで必死なのか、自分が汗でびしょ濡れになっていることに気づいてないようだった。

 ちょっと前には、顔にかいた汗でせっかくの化粧メイクしたかわいいお顔が崩れちゃいそうなことを気にしていたのに、もう、そんなことに気がまわる余裕はないようだ。女の子に、重い自分をおんぶさせて歩かせる醍醐味のもうひとつが、この

「おんぶという肉体労働が大変すぎて、女の子は細かいことに気が回らなくなり、無防備になること」にもある。

 綺麗に揃えた女の子の髪を、おんぶ上から握りしめるように掴んでも「髪触らないで」と叱られたことは一度もないが、そんな女の子でも、おぶさせてない状態でだと髪触られるのを嫌がることも。胸触りも同様で、おんぶ上から女の子の胸に触っても叱られたことはない。女の子へのお触りのハードルを下げるには、おんぶで乗ってしまうことだ、っていう発見は、ボクの女の子大好き人生において大きかった。

「どこまで、おんぶさせる気よ。もう足が痛くなってきたから降りてよ」

「ヤダ、まだ降りるのヤダ。もっとキミの幸せをボクに注入して分けてよ」

「もう今、わたしは幸せじゃないよ。こんな重いのおんぶさせられて、不幸のどん底よ。どうしてくれれんの・・、私の幸せをすべて奪って」

「じゃあ、このまま、しばくおんぶで歩いてくれたら、キミの不幸をボクの身体が吸い取るよ。全部吸い取るから、歩いて歩いて・・」

「もうヤダ、おんぶ終わり」と明るく元気に宣言されて、ボクは降ろされてしまった。でも予想していたよりもかなり長い距離おんぶしてもらえたので

「ここまででもホントに、ありがとう。キミはじゅうぶんにボクに幸せを分けてくれたよ、ありがとう」

「私は、こんなにメイク崩れちゃって、全身汗まみれで、足は痛いし、不幸な女になっちゃったわよ」

「わかった、償うよ。ボク幸せになれたから、キミになんでも償えるよ」

「じゃあまず、食事奢って」

「いいよ、じゃそこのファミレス、バーミヤン入ろ」

「ええっ、もっと高級なとこがいい」

「遠くまで行くんなら、おんぶしてくれよ」

「じゃあ、バミでいいよ」


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