第173話・楽しいことあった幸せな女の子のおんぶ
歩道を歩いてると、正面から元気に早歩きしてくる女性が。ブルーのスカートに白いブラウスというのが、この5月という季節の爽やかさ。なぜ元気に歩いてると感じたかというと、彼女の歩きながらの手の振り方が、妙にかわいくて、楽しそうで元気そうなんで、と。
そんな楽しそうで元気そうな女の子におんぶして歩いてもらえたら、さぞかしボクも楽しいだろうなと思い、スレ違いざまに、呼び止めてしまった。
「あなたの楽しそうで元気そうな歩きを見てたら、ボクも幸せな気持ちになっちゃいました」
「えっ、そんな言われかた、うれしいかも」
「あっ、いまのキミのその反応。いまキミ幸せなことあったばかりでしょ?」
「幸せなことといえば、そうかも」
「キミの幸せ、ボクにも分けてほしいよ」
「いいよ」
「ボク、キミの行く方向へ行くんでいいから、おんぶして」
「えっ、私をおんぶしたいの?どーしよっかな」
「逆。ボクをおんぶしてほしいの。そしたらボクすぐに幸せになれそうで」
「えっ、女の子の私に、男のあなたをおんぶしろって? 逆でしょ」
「逆だから、ボク幸せになれるんで。。じゃあ乗りますよ」と言いながら、ボクは楽しそうなブラウスの女の子の背中に飛び乗る。
「ちょっとお。まだ、おんぶしてあげるなんて言ってないよ」
「クチでは言ってないけど、キミの身体が、乗って乗っててボクを誘惑してるんだもん。だから、ついつい乗っちゃったんだよー、スキテな女の子だなって」
「誘惑してるんだもん、じゃないわよ。もう勝手に」
「だって、してるんだもん」
「私に勝手に乗って幸せになったら、もう降りてよ。男の人をおんぶは重いよ。勝手に乗ってきてもう」
「ちょっとでいいから、歩いてよ」
「まったくもう」といいながら女の子は歩き始めてくれた。
「あああ、やっぱり楽しく幸せな女の子のおんぶは乗り心地が最高に良くて、特に歩いてくれてるこの振動とテンポ感がいい。ボクの身体にキミの身体から幸せの波動がドキドキと流れてくる」
おんぶは、身体と身体のふれ合いの面積が広いこと、重い男の体重が上になってることによる密着力が強いことなどで、女の子の心が肌感覚で上に乗ってるボクにびんびんに伝わってくる。
この今の快適極上感は、幸せで楽しげな女の子のおんぶ。特に、歩みのテンポ感からは、幸せな女の子に乗ってるんだな、を感じたので、ボクは
「さっきみたいに、楽しげに軽やかに早足で歩いてみてくれる?そのほうが、もっといっぱいボクにキミからの幸せ波動が伝わりそうなんで」と、要求。
「おんぶさせた上に、速く歩けって、なによこれ」と、明るい声で文句いいつつも、歩くペースを速めてくれたとこが、これ最高に嬉しい。女の子って、なんでみんなこんなに優しいんだろ、だからボクは女の子大好き。
「もう降りて」
「やだ、ボクの幸せを奪わないで、最後までおんぶして」
「最後までってなによ」
「ボクが夢見て眠るまで」
「いいかげんにしてよ、怒るよ」
「ごめんなさい、すぐ降ります。女の子のおんぶの上で、やだってワガママ言ってみたかったの」
「おんぶなんかさせられたから、汗かいちゃったじゃない、どうしてくれるのよー」
「ボクをおんぶしてくれて、こんなに汗かいてくれて。キミのこの汗がボクを幸せにしてくれたんだね、ありがとう」
「ありがとうじゃなくって、女の子にこんな力仕事させといて、もう」
「おんぶしてくれた後なのに、こんなに元気で楽しそうな女の子。ボク、キミに一目惚れしちゃった、好きぃぃぃ。もう一回おんぶしてぇぇ」と言うと同時に、またボクは、女の子のおんぶに飛び乗った。
「なによ、これ。わたしのほうがおんぶしてもらいたいよー」
「ボクがキミのこと好きなんだからホクがおんぶしてもらうの」
「どういう理屈よ?」
「好きな人におんぶしてもらった方が幸せでしょ?」
「うん、だからって?」
「ボクは大好きなキミにおんぶしてもらえて幸せだよ。キミはボクにおんぶしてもらえても、幸せじゃないでしょ、ボクのこと好きじゃないから」
「なんだか、言いくるめられてるような気が・・」
「ああ、やっぱり、こんな楽し気な女の子のおんぶは気持ちいい」
「なんで、私こんな重いのおんぶしてんのよー」
「幸せを分けてくれてるんだよね」
「なんか、へん」
「歩いてよー。歩いてくれたほうが、上に乗ってるは気持ちよくなるんだから」
「なによ、そのワガママ。歩かされる私のほうは汗噴き出ちゃって、化粧くずれちゃうじゃない」と言いながらも、トコトコと歩き始めてくれ・・幸せ。
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