第110話・女性におんぶでの絶妙の仰角と距離感オーラ
路線バスの座席は、最後列や後輪位置の上などは、周囲の他の座席よりちょっと高い位置にあるため、大当たりラッキーの場合があるのだ。その日も、ボクは、高い位置の座席に座ってた。高い位置の座席は、足の置きどころにやや窮屈感があるため、一般の人からは、あまり人気がない。
すると、ボクの座っている高い位置の座席の前の席に、綺麗に整えた茶髪の女性が座ってくれたもんだから、もう本日は大当たり。ボクの高い位置から、ちょっと見下ろす角度の目の前に、茶髪女性の頭と肩があるため、ちょうど、女の子のおんぶに「乗るよー」と言いながら飛び乗るときの距離感+角度感なのだ。
さすがのワガママ無礼なボクでも、バスの中で前の席に座ってる見知らぬ女性にそんなことはしないが、妄想だけは突っ走ってしまう、それは止められない。妄想だけじゃ、つまんないじゃん、という人も多いであろう。しかし、こんな至近距離で落ち着いてじっくりと見続けていられる機会ってのも、ありそうで意外とない。
しかも、ボクの大好きな、おんぶ乗りの仰角。時間も15分以上は鑑賞していられる。おんぶは長くても女の子ができるのは5分だろう。ボクは、約20センチのところにある綺麗な茶髪を見ながら「ボクは茶髪と金髪とか染めてる髪の方に、黒髪よりも感じるのはなぜなんだろうか。好きになる女性は圧倒的に黒髪なのに、感じるのは、染め髪って、なぜだろう?」って、そんなことも考えたりしながら、目の前の女性の髪を眺めていた。
たぶん、ボクの染め髪フェチは「ファッションとして手を加えてること」に、ありのまま自然体よりも感じてしまうところから来ているようだ。
いまボクの目の前20センチに座ってる女性は、誰のために、髪を綺麗にしてくれているのだろうか。女性の意図としては、自分のためであり、これから会う人のためかもしれない。しかしバスの中での今のこの瞬間は、ボクのために、この女性は自分んの髪を綺麗にしてくれていることになる。
すくなくとも、この女性のヘアケアーによる恩恵をほとんど独占してるのは髪フェチのボクだということ。髪フェチのボクのために、ありがとう。
そんな感謝うっとりな気持ちになって女性の後ろ姿を見つめ、見える範囲から、その女性の全体像を妄想していると、突然、女性が、ボクの方に、うしろに振り向いた。ボクのイヤらしい視線を感じてのことだろうか。ボクは、彼女の頭に自分の顔を近づけていたわけでもないし、手で触れようとしていたわけでもないのだが、女性は、そういうオーラを感じたのかもしれない。
目が合った瞬間、ボクは「あっ、すみません」と言ってしまった。
「すみません、髪が綺麗なんで、見つめてしまってました。色もボクの大好きな色だったもんで・・」と。
女性は「え、ありがとうございます。染めてた色は、色抜けしはししじめてて、そんなに良い状態ではないんですけど」
「元の色との混ざり具合が、いい感じのグラデーション出してるのかもですね。色抜けしてない状態も見て見たいですけど。。もっと明るい色ですか?」
そんな会話をしていると、彼女の降車停留所に着いてしまった。ボクの目的地ではない、どうしようか・・。
「ボクも一緒にここで降りていいですか?」
「いいわよ、っていうかダメという権利わたしにないし」
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