第106話・元体育会女子ならではの男をおんぶ心境
大切な大切なおんぶガールのエツコを怒らせちゃっゃたボクは、懇願して、なんとか、立ち去ろうとするのを引き止めた。
「ごめんなさい、ボクのワガママが悪いのはわかってるんです、エツコの言い分は全部きっちりと聴くから、あそこのジョナサンにでも入って、お喋りデートしよう。
あっ、しようじゃなくて、してください」
ボクが、エツコのおんぶに乗って喜んでるのは、利用されてるみたいでムカつくのかな? ーーそれとも、おんぶという重労働させられてるけど、まあこんなに喜んでくれてるんだから、してるかいあっていいかな、という気持ちもチョコっとはあるものなのかな?」
「そりゃ、喜んでもらえるほうが、こっちも、まあいいっかぁ、になってるよ」
エツコは、おんぶで上に乗ってるボクからの「もっと速く」とか「走って」とか、ワガママな要求をされて、かなりその通りに動いてくれてる、だけど「ムカつく」という感情もある。そこには、カッコイイ強い女としてのチャレンジのような心もあるのだろうか。
たしかに、高校の部活(陸上部)での走り込みのトレーニングでのような、「走れ」とコーチに言われると、反射的に「ハイ」って身体が動いちゃってた日々のような、青春のなつかしさってあったかも。
「ボクも上に乗ってて、エツコのその反射的に動いてるの感じたよ。ボクの言葉に対する反応が、エツコの背中全体に、ピキッって走るのをボク、肌で感じた」
命令口調になっちゃって申し訳ないとは思いつつも、短い言葉で歯切れよく伝えたほうが、テンポ感が良くて、、つい・・・・。ボクの立場で、エツコに「走れ」とか「もっと速く」なんて命令していいわけないのは、わかっていながら、、ごめんね、許してほしいよーー。
でも、こんなカッコイイ女性が、ボクの命令通りに動いてくれてるという快感は、否定できなくて、でも、ボクみたいな冴えない男の命令に反射的に動いちゃってるエツコは、自分が動いてることに、疑問を感じたりとかムカついたりとか?
「なんで、私、男なんかおんぶして走ってんだろ?」
っていう感情は、歩いていながら、いきなり、ふっ、と湧いてくるのよ。一度その感情が湧いちゃうと、なんかすごく重く感じてしまい投げ捨てたくなる。その投げ出したい感情のタイミングで、乗ってるボクが「乗り心地良くて気持ちいい」と言うのと「もっと速く走れ」っていうかで、大きな違いがあるよね。
そうね、気持ちいいって言われることで「なんで、こんな男を気持ちよくするために私は汗かいてんだろ」ってイラッとすることもある。そっか、陸上部のコーチは、自分が気持ちよくなるためにに、エツコに命令してたんじゃないもんね。
乗ってるボクのほうとしては、「もっと速く走れ」よりも「気持ちいい」のほうが、萌え萌え感情になれるんだ、それは、おんぶって、乗ってるボクは能天気な極楽天国の幸せで、おんぶしてる女の子は大変な重労働っていう、天国と地獄のようなギャップがあるところで、ボクの快楽のために女の子が大変な苦労をしてくれてる、ってとこに萌えるの。
エツコのおんぶは、高さが高いから、、街中歩きの景色が爽快感で、これがまた格別なんだよね、そういうふうに、高さを褒められるって、女の子としては、ちょっとは嬉しいものなのかなあ・・・。
背が高いことで、男の人から直接に喜ばれるってこと他にないから、なんか自分を肯定されたみたいで、気持ちがキリッとして、背筋を伸ばして歩くようにしたかも。ーーなるほど、それでか・・エツコのおんぶは、姿勢の良い女性のおんぶだから、ボクの身体がズリオチしなくて安定してるのかも。ズリオチしないおんぶの乗り心地って、すごく快適なんだよ。
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