第107話・お姫様抱っこしてくれた女性は優しくなる

 ジョナサンから出ると、エツコは「今日はもう、おんぶはしないからね。勝手に飛び乗ってきたら、後ろへそのまま倒れて振り落とすからね」と。そんなエツコのカツカツッと胸を張って歩く姿はホントにカッコイイ。

 こんな格好イイ素敵な女性にボクは乗らせてもらっていたんだと思うと、自分が

エツコのおんぶに乗ってエツコを馬のように走らせてる姿を通行人の第3者目線からは、どのように見えるんだろ、と妄想しながら、ひとりで歩くエツコの姿を横から眺めていると、ボクは我慢できなくなってしまった。

「エツコー、お姫様抱っこしてぇ~」

「ええーっ、できるかなぁーー」

と、おんぶはしないと言っていたのに、新しいことにはチャレンジする気になってくれちゃうとこが、エツコが格好イイ女性である基盤、そう、心の基盤・・・こういう心が、格好イイ女を創り上げる。

 ボクは、エツコの正面やや右に横向きに立ち「右腕でいい?」と確認をし、エツコの右腕をボクの背中に回させる。そして、エツコの左腕に、ボクの左足1本を乗せ、つまりボクは、右足で1本立ちになる。ボクの両腕はエツコの首後ろに回して、ボクはまず最初はエツコの首に両腕で、ぶら下がるような体勢とする。

 で、ボクは1本立ちしてる右足で地面を蹴って跳ね上げ、右足を左足と同様に、エツコの左腕の上に乗せる。これで女の子が、前かがみに体勢を崩さなければ、お姫様抱っこは完成だ。エツコは、さすが元体育会女子。

「うわっ、これはキツい、腕が負けちゃうかも」と言いながらも、姿勢をイイ感じに、ソリ腰にして抱っこ体勢を維持してくれた。

 ボクは、エツコの首にぶら下がってる自分の腕に入れてた力をぬいて、全体重をエツコの両腕に預ける。そうするとエツコは「あっ、ダメかも、重い」と言いながらも、ボクを抱っこしつづけてくれてる。

 腕の力を入れっぱなしだと、ボクはリラックスできないので、女の子には申し訳ないのだが、自分の全体重を女の子の細腕に託すのが、お姫様抱っこしてもらう醍醐味なので、エツコ頑張ってボクを抱いててよ、地面に落とさないでよ、エツコの細腕を信じてボクのすべてを預けてるんだからね。

 エツコはなんだかんだ言いながらもボクを抱っこしたまま安定した姿勢を見出し、ソリ腰の体勢で落ち着いてくれた。さすがはエツコだ、カッコイイ女性だ。抱っこされてるボクの感想としては、こんなに抱かれ心地のよい安心感のあるお姫様抱っこしてくれる女の子は素敵すぎると、うっとり。

 こんな安楽なお姫様抱っこしてくれるのは、第25話のミイ以来である。エツコの方がミイより身体が細いので大変そうだったが、そこらへんにボクのことを投げ捨てたりせず、近くのベンチまで運んで優しく降ろしてくれた。そういえばミイも優しく降ろしてくれたっけか。

 女の子にとって、70キロのボクをお姫様抱っこするのはかなり大変なことだとおもうが、にもかかわらず、おろすときには、優しく、そーっとおいてくれる、女の子の気遣いにはじわーっと愛を感じてしまう。女の子っていうのは、お姫様抱っこした相手には、好きな相手でなくても優しくなるってのがあるのだろうか。

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