第85話・脳と身体が一致しない女性のおんぶの波動

「おんぶ、終わりにしてくれないんですか? 下りてくれないんですか??」

と細い声で言ってくるリカコに、ボクは

「もうちょっと、おねがい、おんぶしててほしくて・・・。少しでいいから、リカコの今の失恋の話を聞きたいんだ。リカコにおんぶしてもらってる状態で、失恋の話ききたいの」

「ただ、フラれただけよ。おもしろい話でもないわ」

「失恋したリカコの今のおもいを聞かせてくれるだけでいいよ」

 もうそろそろ2年になるのかな、という仲良し関係だったその、気になる彼とは、友達なのだろうか、恋人同士といえるのか、微妙な距離感で。でもリカコの希望としては恋人関係にもってゆきたいそういう意思表示をしていったのだが、結果はうまくいかず、友達関係としても溝が深まってしまい、とはいえ、嫌われたわけでもなく嫌いになったわけでもなく・・・、、好感度は持ちながらも、距離感だけが縁遠くなってしまってる点が、もどかしくて寂しいと。

 女の子のそんな失恋話を聞かせてもらいながら、その悲しみのどん底の女の子におんぶして歩いてもらってるボクって、なんと貴重なおんぶ体感をさせてもらってるんだろう。ボクの体重がズッシリと乗ってる女の子の肌から伝わってくる感触は、彼女の失恋という悲しみの波動を含んでいて、その失恋哀波動は、おんぶフェチのボクにプラス快感プラス幸福感を与えてくれてるような気も。

「失恋して悲しい女の子が、ボクをおんぶしてくれてる。今ボクは、悲しんでる女の子に乗ってる。女の子の背中の感触は、失恋してる女の子の肌からそういう悲しみ波動を放っていて、ボクが全身でジンジンと感じている」

 リカコは、大好きな男と疎遠になってしまった悲しみの心を内に秘めつつ、好きでもない他の男をおんぶして歩いている。女の子としては、どういう心境なのだろうか。乗せてもらってるボクとしては、お得感と同時に、性的にもすごい気持ちよく感じてしまっている。リカコは、自分の背中の上で、好きでもない男が性的に快感を得てる可能性があることはわかっているはずだ。ボクには、第6,7話ごとく前科が、リカコに対してはある。

 自分に都合の良い妄想ストーリーに酔える才能を持つボクは、リカコがホントに好きで好きでしかたない相手は、リカコをフッたイケメン君ではなく、リカコはボクのことを好きなんだと。リカコの脳みそはまだそのことに気付いていないが、リカコの身体は、もう気づいてしまっている。

 だから、リカコは、頭では

「なんで、私、こんな・・好きでもない男をおんぶして歩いてんだろ?」

と自分のやってることに疑問符を投げているのに、身体のほうは、大好きなボクという男を嬉々としておんぶし、その好きな男が気持ちよくなるためなら、倒れるまで、おんぶという重労働で奉仕しつづけたい。

 でも、リカコの中では、脳と身体が一致していないことで、脳のほうが、自分の身体に対する「悲しさ」を意識してしまい、その「悲しさ」波動が、やはり、上に乗ってるボクを幸せにしてるのは否めない。女の子の悲しみを、自分のシアワセの糧にする男って、やっぱりボクは悪い男なんかな。

 でも、リカコ、最高の哀愁オーラなおんぶをありがとう。失恋哀愁エネルギーでなのか、リカコは、かなり長い距離、ボクをおんぶして歩いてくれちゃった。だけど、ボクを下したあと、体力使い果たしてしまったようで路面に座り込んでしまった。セーラー服の女子高生が、哀愁と疲労で冷たい路面にへたり込んでる絵って、なんて色っぽいんだろ。。




 


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