第29話・看護婦さんに2度抱っこしてもらった

 ボクはよく献血にいく。たけどたまに成分献血をした後、血圧が低くなりすぎて、看護婦さんから「しばらく横になって休んでいてください」と、献血用ベッドにとめおかれることがある。ボクは男性としては、ヘモグロビン濃度が低めなのだ。

 そんなある日、成分献血後のボクの顔色が悪いということで、気づいた看護婦さんが、非常ブザーのようなのを押し、4人の看護婦さんがボクのところに集まってきて

「大丈夫ですか? 気分悪いですか」と質問。ボクは「冷や汗が出てるようで」と答えると「医務室に移します、そちらでしばら安静に・・」と。

 4人の看護婦さんによって、ボクは水平のまま抱きかかえられた。献血でたおれるなんて、なんか恥ずかしいけど、なんかうれしい。4人の中で一番かわいい看護婦さんに目をを合わせると「そのまま動かないで」と話しかけてくれたので、ボクは、

そのかわいい看護婦さんの手を握った。

 4人の看護婦さんに抱かれてしばらく移動してゆく中、ボクは、その子に求愛モードを送り続ける感じで彼女の手を握り続けたが、すぐに医務室のベッドに到着し、看護婦さんによる抱っこは終わってしまった。

 女性4人の腕に抱かれていた温かみに比べると、医務室のベッドは冷たい。4人の中の1人をボクの担当にする話し合いが行われていた。どうも、ボクが手を握って求愛していた女の子は、他の部署の担当だから外れる予定だったものの、ボクが彼女の手だけを握っていたことを4人ともが認識していて、ボクが安心できるようにということでか、そのかわいい看護婦さんを担当にしてくれた。

 ボクはまた彼女の手を握ると

「ずーっとここにいるわけにはいかないんですけど、また様子観に来ますね」

と行ってしまった。そして、10分に1回くらい観にきて、血圧を測っては「まだ低いですね」と。

 3~4回目のときにボクは「ちょっとでいいから、抱っこして」と頼んでみた。

「さっきここに運んでもらったときの看護婦さんの抱っこのぬくもりをもう一回」

「みんな各部署に戻ってるので4人集まるのは緊急事態でもないかぎりできないんで」

「いえ、あなた1人に抱っこしてもらいたいんです。4人でじゃなくて」

 かわいい看護婦さんは「持ち上げられるかしら」といいながら、ボクをお姫様抱っこしようとしてくれた。だけど、なかなか持ち上がらない。ボクは彼女の後ろ首に手をかけて足を彼女の腕に乗せると、うまく乗れた。さすが、看護婦さんは、かわいいコでも力持ちだ。

「えっ、ちょっと危ないです、落ちますよ」といいながらも、必死にボクの全身を両腕で支えてくれている。

 ボクは

「4人で抱かれていたときよりも、キミ1人でのほうが暖かみを感じれて、うれしいです。ありがとう。しばらくこのまま抱いててください」

「しばらくなんてムリです」と下ろされてしまった。

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