第17話・疲れる直線道を女の子のおんぶで

 1~4話で、出てきてるマリコは、その後、彼氏ができて、ボクへの恋心は無くなっていたのだが、たまに会うと、ボクのおんぶガールになってくれた。その日は、マリコと寿司食べ放題をしたあと、都区内地下鉄の某駅からボクの住むアパートへ向かっていたのだ。最近引っ越したボクの新居を見てみたいと。

 マリコは「今日は寿司食べ放題して重くなつてるから、おんぶはしないからね」と警戒していた。地下鉄駅からボクの部屋までは徒歩15分、2つ目のT字路曲ったところから長い直線道路を行く。

「マリコ、この直線道、いつも感じるんだけど、なかなか距離が進んだ感じしない景色で、いつも疲れるんだ。だから、おんぶしてくれよ。マリコのおんぶで行ければ疲れないから」

「おんぶはしない、って言ったでしょ」

「お願い、おんぶして。この直線道は歩きたくないの」

 いやがるマリコに飛び乗ると安定した歩調でカツカツと歩き始めてくれた。この、乗ってしまえば歩き始めてくれるマリコの尽くす性格は何度あじわっても、たまんない。マリコのおんぶは、ここしばらくご無沙汰してて2年以上ぶりだが、その乗り心地には、安堵感のようななつかしさがあった。

「マリコにおんぶしてもらうと、いつも、初めてのおんぶのときのと思いだすよ。

練馬であの暑い夜」

「私との思い出は、おんぶだけなの?」

「だけってことはないけど、マリコといえば、おんぶは外せないかな」

「ひどいよ。クロさん(ボクのこと)重くなったし」

「そう。重くなっちゃったから自分で歩くの、しんどいんで、マリコにおんぶしてほしくて。寿司食べ放題たくさん食べたから歩くのキツいってのもあって」

「おんぶしてる女の子は大変だつてこと、わかってんの? まったくぅ」

 マリコの安定したカツカツという歩みの上に乗ってると、おんぶしてる側の大変さは感覚としては伝わってこない。おんぶしてもらってると、自分の70キロ以上の体重の重さを自分で「重い」と感じることはできない。論理的に頭で考えることによって「70キロ以上の荷物を背負わされて歩いてる女の子は大変だろうな」とわかるだけで、実感ではない。

 この「実感として伝わってこない」が、おんぶのいいところで、だからこそ、上に乗ってるボクは能天気に、おんぶの快楽を堪能してられるのだろう。とはいえ、マリコの汗や息づかい、歩調の乱れなどから、大変さを密着した肌から感じれる面もあり、これが、おんぶフェチを萌えさせる要素として重要。

 それゆえ、ここの、気持ち的に疲れる直線道を、マリコのおんぶで行けるのは嬉しいのだ。直線道は、遠くの目標物もクッキリと見えるのになかなか近づいてこないから、精神的につかれるのだ。

「どこまで、どんくらいこの道を行くの?」とい訊いてくるマリコに「あの赤信号の1つ手前を右」と答えると「ええっあんな遠いのムリ」と。たしかに、かなり遠い。だけどボクは「直線で見えるから遠く感じるだけだよ」と能天気のことを。

 そんなこんなでマリコは結果的には、信号のところまで、おんぶで歩いてくれた。ボクは「あっ、来すぎちゃつたよ、ひとつ手前を右っていうの忘れてた、ごめんごめん。ユーターンユーターン」と言うと、マリコは「ひどいよぉ、重いのに」と泣きそうな声でいいながらも、ボクをおんぶしたまま10メートルほどを引き返してくれ、ボクはこの10メートルに、ニンマリ。。あっ、往復20メートルか・・

 



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