第13話・中学同級生女子に憧れおんぶ

 中学生の時の同窓会に顔を出した。けっこうひさしぶり、十数年以上ぶりなことあり、ボクは、常連出席者たちよりやや注目を受けた。当時好きで告白までしてフラれた女の子ミツエも笑顔で迎えてくれた。ミツエは、相変わらず他の女の子より輝いていて、ボクは、自分の目に間違いはなかつたな、と嬉しくなった。

 片想いしてたミツエを前にボクは緊張していた。中学生のときは話しかけるだけでもドキドキだった女の子に対して、十数年後の同窓会では、ボディータッチくらいゆるされる空気感を飲み込むのにちょっと時間はかかったけど、ミツエの隣に割り込んで座って身体が触れ合うことで、大丈夫だと確認できて、時の流れを感じた。

 同窓会の1次会が終わって会計し、店の外で、たむろってる、よくある飲み会後光景となつた。中央線の某駅まで歩き、2次会組と帰宅組に分かれる。ミツエは自分に片想いしていたボクに気を使って「クロくん行く?」と声をかけてくれた。

 ボクは「ミツエにちょっとしたお願いがあるの」

「なになに? あらたまつて・・」

「おんぶしてほしいんだ、ミツエに」

「えっ、なに子供みたいなこと・・・」

 ボクはミツエからの返事を待たず、自分の荷物をミツエの隣にいた女の子に預けて、ミツエの背中に飛び乗った。

「えっちょっと、ほんとに乗ってきたの? 信じられない、もう」

と言いながら、ミツエは自分の荷物を隣の女子に渡して、両手でボクの両足を支えてくれた。

 中学のときにドキドキして目をあわすだけでも幸せになってた日々を思い起こすと、大好きでしかも片想いのミツエが今おんぶしてくれてる。目の前には憧れのミツエの整った茶髪がある。店から出てきた同窓生たちが「いいなあ、クロ、ミツエのおんぶかよ」と揶揄してくる言葉がすべて優越感に変換される。ミツエのおんぶでボクの目線がみんなより高いことも優越感に寄与してる。

 店の前から駅前に移動、ぞろぞろ歩きはじめると、ミツエは「駅へ向かうよ、降りて、重いよ」と。

 ボクは「降りたくない。ミツエのおんぶ、夢の実現なんだ。お願い。歩いて」と、ミツエにしがみついて懇願した。ミツエは無言で向きを変えると駅に向かってコツコツと歩き始めてくれた。同窓生集団からは10メートル以上遅れて。

 ボクはミツエの背中の上から語りかけた。

 中学のときから、ずーっと、ミツエにおんぶしてもらう夢見てたんだよ、ボク、好きな女の子できると、おんぶしてもらいたくなっちゃう、ヘンな性癖があって、ごめんね、こんな大変ことさせて。

 今こうして、ミツエのおんぶに乗せてもらってる、すごく幸せで気持ちよくて、うっとりしてて、全身の力が抜けちゃってて、いまここで降ろされちゃうと自分では歩けない。

 でも最もうれしいのは大好きなミツエがボクの幸せのために、こんな重労働してくれてること、ミツエにとっては好きでもない相手のボクに、こんなに尽くしてくれてる。ミツエはボクのこと好きなわけではないのに、っていうところが大事なのかな。

 こんなこと大変な労働をさせてるボクを、ミツエは嫌いになっちゃったかな。もし嫌いになったとしたら「嫌いな男のために尽くす」女性にキュンときちゃうかも。

 ミツエのこと好きでよかった。片想いのままだけど。。こんなステキなことしてくれる女性なんだもん、ありがとね。彼女はそんなボクのひとりごとが耳に入っていたのかどうか「あああ、男の人は重いよぉ、手も足もパンパン、明日、筋肉痛になりそ」

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