第4話・花火大会で彼氏いる女の子におんぶしてもらった

 夏の夜、砂浜海岸での花火大会鑑賞を終え、みんなゾロゾロと最寄り駅に向かって歩き始めていた。ボクたちのグループは、ボク、マリコ、マリコの彼氏などを含め男女15人。

 ボクはマリコと目が合うと「ひさしぶりに、マリコにおんぶしてもらいたいな」と。マリコは「重いから、もう、おんぶはしない」と逃げようとしたので、手を掴んで「彼氏のこと、おんぶしてあげてるの?」

「してないよタカシは、おんぶしてなんて言ってこないもん」

「じゃあ、ボクがマリコにおんぶしてもらっても彼氏嫉妬しないね」と言いながら

ボクはマリコの両肩に手を乗せて彼女の背中に飛び乗る体勢にすると、マリコは

「駅まではムリよ、ちょっとだけだからね」と。

マリコのおんぶは半年以上ぶりだったこともあり、乗り心地の感触がすごく良くて、

包み込まれるような安心感があった。

「あああ、やっぱりマリコのおんぶはいい。やさしさを感じるよ」

「他の女の子にも乗ったの?」

「乗ったよ、ミホには何回か」

「えっ、あんな小柄な子におんぶさせたの?」

「そう、小さかった。だからやっぱりマリコが乗り心地いい」

 駅まで歩く人混みの中を歩いてるので、マリコのおんぶでボクだけ目線が高くなってるのが気持ちよかった。マリコの身長が161センチだからボクの目線は、身長190

以上のそれだろう。

 女の子におんぶされてる男ってことで、周囲からの視線を浴びるのもなんか心地よい。駅へ向かうみんなの歩調に合わせた速度なので、男をおんぶしてるマリコにとってはペースが速いようで、マリコ大変そうで息切れし始めた。

 マリコは「この道ずーっと緩い上り坂なのよ、キツいよ」と言い、汗か髪にジワッと出始めていた。ボクの両足を持つマリコの両腕は、もうすでに汗でびしょ濡れで滑るほどだ。

 ボクは「上り坂なんだぁ。おんぶしてもらってると、そういうのわかんないけど、上り坂だと、おんぶしてる側は大変なの?」とひとごとのように聞いてみたり。マリコは「上り坂はツラいよ、足がもうパンパン、心臓もバクバク」。そうは言われても、能天気に上に乗ってるボクには、マリコの苦しみはぜんぜん伝わってこなかった、おんぶってそういうもんだろうか。

 そんなこんなで結果的には、マリコは駅までおんぶしてくれちゃった。江ノ電の駅なのでホームまで階段3~4段。マリコはこの3~4段が登れなくて階段の途中に立ち止まってしまった。

 その状況を見た彼氏が「マリコ、クロ(ボクのこと)をおんぶして海岸からここまで、凄いなぁ、今度、俺もおんぶしてもらおっと」。

 ボクは彼氏に譲る形で、マリコから降りた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る