第3話・いつもおんぶしてくれる女の子との恋心

 マリコは「わかったわよ。おんぶするわよ、約束だから。でもなんでそんなにおんぶおんぶなの?」と言いながら、ボクのほうへ背中を向けて、おんぶする体勢で構えてくれた。

 ボクはマリコに「しゃがんで」と言い、道路にしゃがみこんだマリコの背中に乗り

「ハイ、いいよ、そのまま立ち上がって」と命令口調で告げると、マリコはボクを背負って立ち上がろうとするも、重くて立てない。

「ムリ、立てないよぉ」

「しょうがないなぁ、じゃあ、さつきみたいに飛び乗るから立って」

ボクはマリコの背中に飛び乗ると、マリコは、その乗られた勢いで2~3歩、トトトツと前へでたが安定していた。

ボクは答えた「なんで、おんぶなのかって? 楽ちんで気持ちいいからだよ。マリコがおんぶして歩いてくれるんで、楽ちん楽ちん。楽ちんなだけでなく、女の子のおんぶつて、こんなに気持ちいいとは知らなかったよ、気持ちいいんだ」

 マリコはかすれた声で「おんぶしてる女の子は大変なんだつてことわかってるの?」と返しながらも、コツコツと靴音を立てて歩いてくれてる。ボクはわかってはいたが、あえて「おんぶってそんなに大変なの? そんなに重い? がんばれー」なんて言ってみた。

 それに対してマリコは無言で黙々と歩いていたので「大変なのに、ありがとねー。

マリコが頑張ってくれてるおかげで、こっちは楽ちんだよ、楽ちん楽ちん、あー楽ちん、楽ちん楽ちん、あー楽ちん、・・・」と言ってると、マリコは「楽ちん楽ちんって言わないでよー、こっちはキツいんだから」と。そんなこんなでマリコのアパートに到着。

 冒頭で述べたように、ボクには遠距離恋愛の女性がいるため、片想いしてくれてるマリコと交際する気にはなれないのだが、遠距離恋愛の相手の女性は、小柄なこともあつて、おんぶしてくれない。マリコは汗まみれになってフラフラになるまでおんぶしてくれる。

 海水浴へ行っても花火大会へ行っても、「おんぶして」と言えば、マリコはボクを

おんぶして歩いてくれる。それでもボクの恋心は、マリコには向かなかった、恋愛とは残酷なものだと、自分の心のことなのに、そう感じた。そしてボクは遠距離恋愛の相手に振られた。それでもマリコを恋愛対象にすることはできなかった。それなのに

機会さえあれば、おんぶしてもらっていた。

 マリコは「クロさん(ボクのこと)重いから、もうおんぶしない」と言いつつも、

後ろから飛び乗ってしまえば、ボクの両足をちゃんとマリコの両腕で持って、ちゃんとしたおんぶの体勢でトコトコと歩いてくれた。

 翌年の夏までにマリコにも彼氏ができた。マリコ、彼氏、ボクも含めて15人くらいで花火大会へ行き、チャンスがあったので、ボクはマリコにひさしぶりに、

おんぶをせがんだ。当然、彼氏もいる場で・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る