第2話・おんぶして走ってくれた女の子は汗まみれ

 マリコは「ズリ落ちてくると重く感じるぅぅ」と言いながら、軽くジャンプする

ように、ボクの身体全体を高い位置に修正しつつ「落ちないように乗れないの?」と

言ってきた。乗ってるボクのほうとしても、ずり落ちない高い位置地にとどまれた方が、乗り心地良くて楽なので、マリコには「マリコがしっかりおんぶして、ずり落ちないようにしろよ」と言いたいところだが、それはやめて次の提案をした。

「マリコ、走ってみたら? 走るとずり落ちないかもよ」

「ええっ、おんぶしてるだけで大変なのに走れっていうの?」

「走れとは言わないよ、走れるなら走ってみたら、ってだけで。マリコならできるかなって」

 マリコは無言で走り始めた。カツカツカツと走る振動で、ボクの身体は上下振動し、おんぶの高い位置からずり落ちない。荷物を持ってくれてる友達たちから

十数メートル遅れてマリコは歩いていたので追いつく勢いで走る。

 走ることで、マリコの上半身がやや前傾姿勢になるので、乗ってるボクの

体勢も楽に乗れてる感じになり、また、女の子におんぶさせて走らせてることに、

こんなこと女の子にやらせる人生って素敵すぎる、と、うっとりしてしまった。

 前傾姿勢になったマリコの背中に抱き着くと、マリコのロングヘアーのたなびくのが、ボクの首筋に触れて「ああ~、女の子がボクをおんぶして走ってくれてるんだなぁ、最高の気分・・」と。マリコの前傾姿勢に抱き着かず、自分の上半身を立てて前を見る姿勢にすると、マリコの走りによって感じる向かい風が気持ちいい。

 蒸し暑い夏の夕方、女の子を走らせて自分だけ風に涼んでいる贅沢感。ボクを背負って走ってるマリコは汗だくなことだろう。そのことを思うと、性的快感に近いもの

を感じてしまい、そのことを隠すようにマリコの背中に抱き着いた。

 同行の友達たちに追いつくとマリコは立ち止まり「もう限界、降りて」と、汗まみれの髪を垂らして下を向いた姿勢で言ってきた。ボクは「ええっ、最後までおんぶしてくれないの?」と。

「もうムリ、お願いだから降りて」

「またおんぶしてくれるって約束するなら、降りてあげてもいいけど」

「またしてあげるから、とりあえず今は降りてください」

「ホントは降りたくないんだけど、またおんぶ約束だよ」

「約束します、だから今は‥休ませて・・」

 ボクはぴょんと飛び降りた。マリコの服に触れると、びしょ濡れを通り越して水没したような汗だくで、能天気に乗って走らせてたボクも驚いた。しばらくガードレールに座ってマリコは休み、友達たちにはアパートのカギを渡して先に入っててもらうことに。彼らは、マリコが僕に片想いしてるのを知ってるので、汗だくでハーハーゼーゼーのマリコに対して「好きでやってんだから、いいんじゃない」という視線。

 5~10分ほど休んだところで、マリコが「もう大丈夫、行こう」と。その言葉を

聴いてボクは「大丈夫になった、よかった。じゃあ乗るよ」とマリコの両肩に後ろから手を乗せると、マリコは「えっ、乗るんですか? こんなフラフラな女の子に乗るんですか?」「うん、乗りたい・・・」

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