旅は道連れ世は

「生きる目的がない人と言うのはこの世界において死人と同義なんですよ。明日をただただ怠惰に過ごすことを神様も天使様も許さないんですね。だから皆何かしらの理由を持って生きています。基本的に転生してきた方々は、何かしら理由があるはずなんですよ。世界を救いたい〜とか、魔王を倒すとか。」




「じゃあ俺も魔王討伐とかそんなだいそれた理由があってここに来たと?」




「いや、魔王に支配されている地域はありますけど、殆ど平和ですし。それにきちんと選挙に立候補して勝ち上がってますからね魔王。」




「ただの党首かよ...。」




「だから魔王が〜とか言って転生してきた方々は政治家になってより良い国を目指すために邁進してますね。」




「平和だ!そしてとっても理性的!」




「でもとってもわかりやすくって良いでしょう?」




生きる目的。


俺には政治家になろうとする野望はないし、ましてや大冒険もしたいとは思わない。


この世界にやってくる転生者は、何らかの理由を持って転生者になったらしいが、やりたい事や目標なんてこれっぽっちも見当たらない。だがそれじゃあ済まないのがこの世界。


死を迎える前に何かしら理由を見つけなければいけないようだ。


俺はラスタに一つの疑問を投げかける。




「心が死ぬと、どうなるんですか」




「人でなくなります。いわゆるモンスター。怪物になって誰かに怪我をさせたり、病気をばらまいたり、まあ皆から嫌われる存在になってしまいますね。もちろん外見も少しずつ化け物になりますよ」




それは一大事だ...。


まだ俺だってピチピチの若者なのに、化け物になるわけにはいかない。先程よりも焦燥感が増す。


だが、どうやって目的を作ればいいんだ?化け物にならないためには。もういっそ政治家になるか?




「そうならないために、聞きに行きましょう。天使様に、あなたの目的を、成すべきことを。」




バシン、とラスタは机を叩いて立ち上がる。


その口元はニヤリと曲がり、何か悪いことを考えているように見えた。




「転生してきた理由、ここで生きる目的が何だったのかを探すのが目的。なぜカガヤさんを転生させたのかを天使様に聞き出すのが目的!それなら大丈夫でしょう。」




目的を聞き出すことが目的。


何か、まどろっこしい感じはするけれども、それでモンスターにならないならば御の字だ。




よくよく考えてみれば結果的にラスタが俺を呼び出したような気もするのだが、それは本当に結果論であって、目的、というのは個々が持っているものらしかった。




「じゃあ早速向かいましょう。まだ俺死にたくないんで。どこに行けば天使様に会えるんですか?」




「まあまあ待ち給え貴様、カガヤさんよ」




彼女は未だに少し悪い顔。何か考えがあるらしく嫌〜な感じにほくそ笑んでいる。




「旅は道連れ世は情け、とも言いますからねカガヤさん。道中は私の仕事のお手伝い、してくださいね。」




「なんの仕事だよ。」




彼女はちょっと得意げにフフンと笑みを追加して、俺に向かってひとこと。




「代行屋」




それだけ言って、ワンピースを翻した。


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