耳とラスタと俺の目的
「アナタ、転生した目的は?」
「知るか!」
寂れた荒野のド真ん中、レンガ造りの一軒家に俺の叫びが響いた。
「目的もなしに別の世界から転生ですか...ちょっと甘いんじゃないですかね?」
「甘いってなんだよ。こっちはしたくって異世界転生したわけじゃないんですけど!」
「こっちだってあなたに来てほしくって呼んだわけじゃないですしい。たまたま、呼んじゃっただけですし〜。」
俺の目の前で、木の椅子に腰掛けるまるで面接官のような女は
「いや〜コイツ舐めてんなあ...」といった風に顔を歪める。
いつの間にか俺はここにいた。
気づいたら座っていて、目の前には女が一人。
先程であったばかりの女。面接官にしてはまだまだ幼く見える。というより面接官じゃない。
年は俺と同じくらいだ。
茶色の長い髪。スレンダーな体躯。すうっと透き通るような白い肌の上には、薄い緑のワンピース。少し眉が垂れ下がり、おっとりとした顔つきをしている。
キレイな人。見た目は。
ここまでが第ニ印象。
肝心な彼女第一印象はというと、どういうわけだか犬か猫のような茶色の耳が頭の上にピンと鎮座している。
そこにしか目が行かなかった。
「おぉ...。」と感嘆の声が出そうにもなったが、ぐっと我慢した。俺がいたはずの世界ではそんなモノが生えてる人はいなかった。はず。
でも今は、それどころじゃない。
「たまたま呼んじゃったってどう言うことだよ。」
「仕事の相方を募集していたんですよ。それで、天使様に何か野望を持ったやつ、いないっすか?って聞いてみたらこんな感じですよ」
「どんな感じだよ!というよりほとんどお前のせいじゃないかい!」
「ははぁ〜ん初対面で女の子にオマエとか言っちゃう系の方ですかぁ。駄目だなこりゃあ。」
フッとほくそ笑んで「あぁ、こいつダメ男だわ〜」っと言わんばかりのなんとも言えない表情でドスリと机に肘を付き、手の上に顎をおいた。初対面でそんな呆れたポーズをするのもどうかと思う。
「ラスタ」
目をそらして呆れたように彼女は言った。
「何?」
「ラスタって呼んでください。今はね。で、貴様の名前は?」
貴様なんて生まれてこの方初めて言われた。ちょっと上から目線すぎるだろこの女、もといラスタ。あと今はね、って何だよ。疑問も湧くけれど、とりあえず自分の名前を名乗ることにする。
「俺は、カガヤ」
「歳はいくつです?」
「18」
「趣味はなんです?」
「...ネット?」
「好きな食べ物は?」
「それ今関係あるのか?」
「じゃあ、この世界に来た目的はなんでしょう?」
「だから知らねえってば!」
「じゃあ目的、作りましょっか」
すん、と一瞬空気に筋が通った。
少しだけ緊張が走ったと言うべきか、彼女と俺の時が止まる。
先程の面倒くさそうな彼女とはうってかわって、手を顎の下に置いてはいるものの、少しばかり真面目に見えた。
「死にますよ。目的がないと」
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