耽美たる回顧録 後編
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フードを深く被った少女と対峙しつつ、思念を読もうとするがうまくいかない。
少女の足元の影が不自然に盛り上がり、大きく形を成して二メートルほどの人型となる。
わたしは直感的に確信した。
――これは
わたしは即座に
少女の呼び出した漆黒の
『ファーデルメイデン』は一瞬だけ体勢を崩すが、黒い
踏み込むように接近されると、有り得ないほどの
わたしの
身を立て直す『ファーデルメイデン』に黒い
レイピアを振り
奴は大剣を意志のみで操れるようだった。
わたしは必死で思念を読もうとするけれど、少女も黒い
素手で殴り合う超接近戦になると力の差は歴然だった。
同じ猫科でもまるで獅子と子猫だ。
わたしの攻撃は戯れているかのように淡々と
その感覚にわたし自身、呻きながらも静かに佇む少女を見据える。
少女は深く被ったフードのその奥、蒼い十字の瞳を輝かせて言い放つ。
「あなたの
わたしは初めて恐怖というものを全身で味わった。
生殺与奪の一切を握られる恐怖。
闘いに敗れた者が辿る運命を。
そして、その命を
「あなたはここで
黒い
わたしはその場に崩れ落ちて大きく息を吐いてから見渡すと、少女の姿も何処かへ消えていた。
重厚な鎧装の、白い騎士の
闘いに負けた。
一対一の命を賭けた決闘に敗れたことの屈辱感。
それは物言わぬ
「……わたしは
わたしはたった一度の敗北を胸に秘めた。
自分の周囲の狭い世界で持て
今までのわたしは、『人生を何かによって閉ざされている時の代償体験』、あるいは『しばらく人生から
そこには、考えるための生活の余白はいくらでもある。
しかし、その余白は行動を停止することによって生まれたものであって、それ自体として思想的体験と呼べるような鮮烈なものではなかった。
次の日の早朝、わたしは近くの教会へと足を運んだ。
まともに祈りすら捧げたことはなかったが、わたしの
教会の扉を開くと中には複数のシスターと、奥の祭壇に赤い髪の祭服を着た少女と
「――思っていたよりも早かったな。」
赤い髪の少女が口を開いた。
彼女達の下へ近づくと、言葉を贈られる。
「
威厳を込めた声色ですらすらと告げ、胸の前に聖書を掲げた赤髪の少女。
傍らにはフード付きのケープコートを着た蒼い瞳の少女がわたしを
「
わたしは赤い髪の少女を見つめたあと、
「汝に主と
そうして、わたしは七位巫女神官として、南部都市とその聖堂を管轄するシスターとなったのだった――
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