第3話 幼女と美味しいご飯

さて、ほんの数十秒前にカッコつけて決心みたいなことをしてみたんですけどあれですねー。


僕は新しい問題が発生しています。


これをなんとか解決しないことには次に進めそうにありませんね。


でも、僕は何時間も歩いてその後に走ってと結構疲れてしまっています。


どうしましょう。


お腹が減っているのに…何もやる気が起きません。


ベッドにゴロゴロしているのが限界です。


お腹に住んでいる言われる虫は僕の事情など知らずにとっても元気ですね。


さ、どうしましょ…。


この宿で料理が食べられるなんてことはほぼ不可能と考えていいだろう。


つまり、なんとかしてこの現状を打破してご飯を食べなくてはいけないということですね!


…普通に立ち上がればいいんですけどね。


「とはいうものの…飯屋知らないんだよな」


とりあえずフラフラ歩くことにしましょう。


このエリーゼの村は中心に噴水があり、そこから太い道が伸びている。その太い道からいくつか枝分かれをするように細い路地のようなものがあり、それぞれ似たような店が立ち並んでいる。


宿屋通りの反対側の道を歩いてみる。


辺りからはいい匂いがする。ここが食べ物を売っている通りなのかもしれない。


どこにしようかな?


いろいろありすぎると、困っちゃうんだよなー。


それでもって初めて入る店って勇気がいるから勧誘とかされたら楽なんだけどねー。


あれ?腕を引っ張られている?


「ねーねー。お兄さん暇?」


おやおや、ついに僕にも春が来たのかな?


それにしては随分と幼い感じの声だなぁ…。


「おにーさーん!聞こえないのー?」


声の方を向くとちっちゃな女の子が居た。


おやおや、随分と可愛らしいお子さんですね。でも、そういう風にお誘いをするにはまだまだ早いんじゃないかな?


「な、なにか用かな?」


「お兄さんこんなところでフラフラして何してるの?」


あ、そう言えばお兄さんって呼ばれるのいつぶりなんだろうか?なんだか目から汗が…こ、これは涙じゃない!目汁だ!!


「ちょっとご飯を食べようかなーって思ってたんだけど、どこがいいかわからなくてね」


「そしたらうちに来なよ!」


満面の笑みでこっちを見てくれる幼女ちゃん。いい笑顔だね!客商売向きだね!どっかの宿屋の店主に見せてあげたいよ!


「安い?」


ちょっと財布事情がね…。


「んー?普通だと思う」


「そっか。正直に言ってくれたからいこうかな」


正直なのはいいことだよね!


「やったー!じゃ、ついてきて!」


可愛らしく両手を上げて喜んでくれる幼女ちゃん。


あぁ…癒やされるぅ…。召されるぅ…。


これを見れただけで選んで正解だったのかもしれない。


見た目は10歳に満たないくらに見える。ちょっとたれ眼なのはなのがまたその可愛らしさをおしあげていた。この子は将来キレイになるんじゃないかな!


あ、ちなみに僕にそういう趣味は無いですからね!違いますよ?


幼女ちゃんについていくと通りの奥の方に連れて行かれた。


きっとこの村は中央の通りから奥に行けば行くほど料金が低くなると僕は考えているので…お財布には優しそうですね!やったぜ。


「ついたよお兄ちゃん!」


おお!


素晴らしい外観ですね!木造でこれまたいい感じに年季の入っている感じの見た目と雰囲気のあるお店ですね!いや〜ここ常連客とか多いんでしょうね〜。


はい。すいません。きっと僕一人だったら入れないタイプのお店です。


「おかーさーん!お客さんだよー!」


「ターシャ!あんたまた外に行っていたのかい?危ないって言ったろ?」


「ごめんなさい…。でも、お兄さんいい人そうだったから…」


「いい人そうっていっても悪い人も居るんだから気をつけなさいっていつも言っているでしょう!」


「はーい…」


「お、お兄さんは…悪い人じゃないはずだよ。たぶん」


自分で言ってて恥ずかしくなったよね。


「悪いね兄ちゃん。そんな自身なさそうに悪い人じゃないって言っているやつは悪いやつじゃないだろうから大丈夫だね」


それはどんな判断基準なんだろうか?


もしかしてこれってあれですか?気に入らないやつには飯も出さない的なやつですかね…。


でも…まぁOKってことでいいよね。いいんですよね!よっしゃ飯だ!


「テキトーな場所に座ってくれていいよ。この時間は客が少ないからすぐに出せると思うよ」


カウンターに座ってメニューをみてみると居酒屋みたいなメニューがおおいな。卵焼きやからあげとかこれはお酒が進みそうですね。


「おにーさん何にしますか?」


気がつくと僕のすぐ近くにいるターシャちゃんにちょっとビビる。君瞬間移動とか使えるの?


「うーんと…じゃあ、ターシャちゃんのおすすめでおねがいしようかな」


「えっと、オムライス!」


「お!じゃあそれでお願いしようか」


「はーい!わかりました~!少々お待ちくださーい!」


テトテトと厨房の方へ走っていくターシャちゃん。裏で「オムライスだってー」という声が聞こえてきてこれまた癒やされる。


この世界に生まれてから実家の回りに家がなかったから自分より下の世代の子供と関わることなんてなかったからとても新鮮だ。


ちなみに精神年齢の方は30歳オーバーなので微笑ましいなーくらいの感想しか出てこないから精神的に年を取ってしまったと思い…しんどくなってきた。


厨房の奥からは調理の音が聞こえてくる。


この世界に生まれてこの方外食したこと無いじゃん!!


ということで10年ぶりの外食!ワオ!久しぶりにこういう賑やかな感じの音を聞いたなー。熱烈な中華を思い出すよ。


「ほいよおまち。特製オムライスだよ」


目の前に置かれたのは想像よりもおしゃれなオムライスだった。


この世界にもケチャップあるのか!びっくりだわ!赤いライスだ〜!あ、普通にトマトなのかな。


その上に乗っているふわふわなオムレツを真ん中から割ってみるととろとろに作られたオムライスになった。


「いただきます!」


う…視線を感じる。


「な、何かなターシャちゃん?」


「お兄さんのさっき言ってたのって何?」


「ああ、これはね僕の住んでいたところに伝わっているおまじないみたいなものかな?食材に感謝するためのおまじないかな」


「へーそんなのあるんだ!いいね!」


異国日本の文化に触れそれを素直にいいねと言ってもらえるとなんだか嬉しくなる。


いいな子供って。思ったことを口に出すときほど素直でそれでいて素晴らしい感性を持っているからな。


でもねターシャちゃん?そんなに見つめられると食べづらいよ?


食欲には勝てないので視線を無視しながらオムライスをつつく。


ほかほかと上がる湯気が上にかかっていたふわふわの卵の膜を割ると湧き出してきた。


一口頬張れば、トマトの爽やかな香りと上に少しかかっていたコショウの香りが鼻を抜けていき、ちょっと強めの塩味のご飯を卵のまろやかさが包み込んでくれていて…。


僕には食レポの才能は無いみたいなので諦めますね!


こういう時はターシャちゃんを見習って素直な感想を言いましょう!


「おいしい!」


「ほんと!?やったー!」


両手を上げて喜んでそのまままたテトテトと厨房に行きお母さんに報告をしに行くターシャちゃん。


世の中にこんなにいい子って居るんですかね?え?僕の心が荒んでいるだけ?そんなことはないはず…あれ、また眼汁が…?


温かくて美味しいご飯に出会うことができたのはターシャちゃんについてきたからだろう。


偶然の出会いとはいえ、いいお店を見つけることができたみたい。


また来よう。

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