第3話:ずっと一緒
『和也…くん?』
その綺麗な声に振り向くと、ずっと子供の頃から一緒にいてくれた春姉さんだった。
春姉さんって抱きつきたくなったが俺だってもう子供じゃない。
そう思って和也くんはさっき泣いていたことを隠すように腰に手を当てた。
『春姉がこんなところにいるなんて珍しいなどうしたの?』
『いや、ここら辺で崩落があったって聞いたから調査に来たのよ。まさか和也くんが居たなんて』
そう。春姉さんは美貌美人だがこう見えて世界の崩落した地域を調査する特殊部隊の隊長なのだ。
『大丈夫?怪我とかしてない?ほら怪我してるじゃん!』
『気にすんな。軽い傷なら数日もすれば治る』
色んなことがあって気づいてなかったが足に怪我をしていたらしい。だがただの擦り傷だった。
『他に人は?誰かと一緒にいたの?』
その言葉を聞いて俺は思い出した。
『雅人が、瓦礫の下に…』
春姉は驚いた顔をして急いで裏路地があった方へ向い、瓦礫をどかそうとした。
やっとのことで動いた瓦礫下には雅人の倒れた体があった。
春姉は膝から崩れ落ちて、泣き出した。無理もない。雅人を俺と同じように面倒を見てくれてた優しい春姉だからだ。
俺ももらい泣きをしそうになったが必死にこらえた。本当はもっと泣き叫びたいとも思った、
落ち着いた春姉は、
『このことは上層部に私から報告しておくわ、和也はこれから行く宛てはあるの?』
『いや、家もここと同じように崩落するのも時間の問題だろうし、家には帰りたくない…』
昨日寝ていた時から薄々感ずいてはいたけど至る所が壊れていた。あの家もずっと昔の先祖から変わらない家だった。
『なら、私の管轄内の施設の部屋の住みなさい。そこならまだ新しいからすぐ崩落する心配もないわ。』
『いや、俺は政府の者じゃない。急に一般人があんな所に入ったら怒られるのは春姉じゃないか。そんな心配かけられない』
『大丈夫よ。そこまで政府は堅い考え方はしてないわ。むしろ今生きている人は1人でも多く助けるのが今の目標よ。』
『それに私は隊長よ?私から言えば許してもらえるわ。』
『そんな心配をさせるならひとりで生きる』
そう言ってその場を去ろうとしたが、春姉が急に抱きついてきた。
『な、何するんだよ!離せよ。動けないだろ』
『お願い。あんたまで死なせたくないの。この荒廃した世界でどうやって1人で生きるっていうの?たとえ他の人とは知識の多さがあったって人間は人間変わらない。あんただって死ぬ時は死ぬのよ…』
『それくらい俺が1番わかってるよ!』
『なら!私に着いてきて…』
その時春姉の抱きしめる力が強くなったのがわかった。震えてもいた。
『お願いだから…お姉ちゃんの言うことを聞いて…』
春姉が真剣に俺たちのことを考えてくれてたってその時改めて思った。
『分かったよ。一緒に行くよ。ただし、任務には同行しないからな』
『ありがとう。さぁ、私の領域の施設はこっちよ。』
〜あなたにも大切な人がいるはず。親だったり、友達、親友や知り合い。恋人や、兄弟、姉妹。心を閉ざしたまま相手の話を聞かないでいる人はいるんじゃないですか?一度でいいからその言葉に耳を傾けてみてください。あなたを大切に思う人がそうやって伝えようとしています。
〜4話へ続く〜
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