「身体障害者」の制度

 さて。私のくだらない身の上話はこのくらいにして、ここからは少しお堅い話をしよう。

 まずは「身体障害者」の定義を決めておこう。ここでは、「身体障害者手帳を交付された者」を身体障害者と定義する。

 なぜわざわざこういう持って回った言い方をするかというと、ここの定義があやふやなままだと、私のように「障害こそあるが手帳を交付される基準には届いていない人間」がなんで鬱憤をためているのか、いまいち理解できないだろうからだ。


 というワケで、身体障碍者手帳制度について、読者諸兄はどれくらい知っているだろうか。おそらく、そういう専門の仕事に従事している方を除けば、ふわっと名前くらいは知ってる程度ではなかろうかと思う。私も当事者でなければ調べようとも思わなかっただろう。


 ちなみに今回は身体障害者手帳制度について知るために、厚生労働省ホームページの「身体障害者手帳」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/shougaishatechou/index.html)の項を大いに参照している。


 さて。身体障害者手帳は、「身体障害者福祉法に定める障害」をもつものに交付される。

 なおいずれも、一定以上で永続すること、つまり将来的に治る可能性が極めて小さいことが要件である。要するに、腕がちょん切れれば障害だが、骨がブチ折れた程度では障害とはならないということだ。いやまあ、よっぽどひどい折れ方をすれば障害になるやもしれんが。

 さておき、概要に記載された交付対象の障害は、以下の通りだ。


・ 視覚障害

・ 聴覚又は平衡機能の障害

・ 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害

・ 肢体不自由

・ 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害

・ ぼうこう又は直腸の機能の障害

・ 小腸の機能の障害

・ ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害

・ 肝臓の機能の障害


 おや、視覚障害が入っている。しかも一番トップに来ているじゃあないか。

 しかし私は右眼球を喪失しているのに、分類上は健常者だ。身体障碍者には認定されていない。もちろん全摘してしまっているから、治る見込みなんぞ皆無。これはいかに。

 ここで厄介なのが、等級という概念だ。

 等級というのはいわゆるランクだ。7級から始まり、障害が重度になっていくにつれて1級まで登っていく。S級とかはない。

 このうち、6吸以上のもの、もしくは7級の障害が二つ以上あるものが身体障害者手帳交付の対象となる。私はここで弾かれている。


 えっ!? 目ン玉片っぽ無いのにそんなに等級低いの!?


 そう思っていただけた読者諸兄も多い事と思う。多いといいなあ。

 これについては手っ取り早く、URLを張るので各自飛んで確認してほしい。


身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000172197.pdf)


 上記PDFの3ページ目、一番左側の視覚障害の欄を見て欲しい。6級の条件だ。


"視力の良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下かつ他方の眼の視力0.02以下のもの"


 これが、視覚障害で障害者手帳を取得するための最低条件である。


――おわかりいただけただろうか。


 視覚障害はあくまで視力(しかも矯正視力)で判定する。なのでたとえ片目の視力がゼロだろうと、もう片方がそこそこ見えていると障害者とは認めてもらえないのである。さらにこの0.6という数字がいやらしい。運転免許証を持っておられる方なら知っているだろうが、免許取得・更新の際の視力の最低条件は両眼合計で0.7以上なのである。つまり手帳と運転免許はトレードオフの関係にあるのだ。

 そして、私の視力は前回の更新時点で、ギリギリ0.7(矯正)。


 ……私は身体障害者になりたい。

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