なんでそんなに身体障害者になりたいのさ

 そもそもである。何故私はそんなに身体障害者になりたいのか。

 いや、いちいち問うまい。動機は不純で単純。すなわち「お金」である。


 そもそも身体障害者手帳というのは、身体障碍者が健常者と同等の生活ができるようにする更生援護を目的とした各種サービスを受け取るための証明書だ。サービスの内容は多岐にわたる。医療費の低減、医療具の購入補助という医療関連の直接的な補助から、JR運賃は半額、博物館・美術館等の公共施設利用料の割引、映画を安く見れる、電話料金が安くなる、NHKが安く見れる、税金関係の優遇と、財布にがっつり優しいサービスが多く存在するのだ。(各自治体によって異なる場合があります)

 それが、片目無いけど残ったほうに視力があるから身障者にはなれませーん! と言われたらふざけんなこんにゃろ―!となる。自然な成り行きだ。

 この制度を調べれば調べるほど、こんな基準にしたお偉いさんの片目をスプーンで抉り出してやりてぇな―!と考えてしまうのだが、益体の無い事だ。ていうかそれは犯罪である。


 そして今回発生した個人的重大事件がこれに輪をかけた。つまり義眼の新調が必要になったことによって、上に列挙したうち「医療具の購入補助」がバリバリに効いてくるのである。


 前の項で述べたとおり、義眼というのは最低でも13万円する高級品だ。もっともこれは医療の一環なので国民健康保険がきくのだが、それでも6割くらいは患者が負担しなくてはならない。。

 しかしこれが身体障害者であると、なんとお住いの市町村が装具代金の9割を負担してくれるのである。

 これを知って私は腹の底から憤慨した。


 視力がちょっとだけ基準に届かないからって、6倍も金を出さなきゃならんとか、バカげてる!


 まるで私の通っていた中学校で、自転車通学が許可される範囲が「学校を中心とした2.5kmの円外」だったところウチは学校から2.45kmの位置にあり徒歩通学を強いられた時や、北陸新幹線高架が実家すれすれを掠めていくので音も振動も凄いのに敷地には引っかかってないから何の補償もなかった時のような、俺は国におちょくられているのだろうかと被害妄想してしまうような「いちたりない」現象に憤慨した!


 というワケで、私はついに腹を括った。


 私は、身体障害者になる!

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