第11話 殺せ!殺せ!主の御名の元に(後編)


ドリルが付いた筒の様な大型の輸送車両が地中を突き進んでいく。


だが車内ではこれから敵陣に乗り込むとは思えない程、雰囲気が明るかった。


皆装備の点検をしながら談笑し、冗談を交わし合ってさえいた。


「「注目!!」」


その言葉と共に目線が一箇所に注がれ、場が静まり返る。


「作戦行動の簡潔な確認だ。第2小隊と第3小隊は自分と共に来い。自分が全体の指揮を執りながら直接指揮する」


「第1小隊はクレシエンテが指揮する。先陣を切って敵を混乱に陥れろ」


「第4小隊と第5小隊はスールが指揮して遠距離から増援の足止めと敵射撃陣地の排除を」


「リトニウス!お前に重装甲部隊である第6小隊と戦闘工兵部隊である第7部隊を任せる」


「防御陣地を構築し、敵が機甲戦力で攻めてきたら粉砕して車両と陣地を守り通せ!」


「ハッ!!!」


4メートル半程もある装甲の塊が返答する。


「複数の部隊を指揮するのは初めてだな。だがお前なら可能な任務だと考えている」


「作戦の成否はお前がどれだけ時間を稼げるかに掛かっていると言っても良い。期待してるぞ」


「必要ならスールの支援を求めろ」


「了解です!指揮官殿!必ずやご期待に沿った働きを致します!!」


「到達まで後2分だ。地上の正規軍の生死は自分達にかかっている」


第4小隊の一人の少女が手を上げる。


「発言を許可する」


「航空支援は期待出来ますか?」


「もう既に空中戦が始まっている。攻撃機の支援運用は出来ないとの回答が大佐からあった」


「了解です。指揮官」


「後30秒………」


「20秒……」


「10秒…」


「全員対ショック姿勢!!地上に出たら直ぐに車両から飛び出せ!」


「作戦開始!!!」


ドォォォォォン!!!!


大きな音と共に連合軍防衛基地の地面が吹き飛び、巨大な車両が地面から出てきた。


兵士達は咄嗟に地面に伏せて回避行動を取った。


4, 5秒すると土煙の背後に巨大な影が見え、「敵」と即座に認識し持っている火器で応戦した。


ビュオッ!


次の瞬間、一陣の風が兵士達の間を通り抜ける。


2, 3秒すると兵士達の足や首や胴体がボトボトと落ちていった。


「自分に続け」


ブレードを持った装甲機士が目にも止まらぬスピードで次々と敵兵の身体を切り落としていく。


ビルの屋上や防衛陣地から機銃弾や機関砲弾の雨が装甲機士と周りに居る配下達に向かって降り注ぐ。


だが、装甲機士とその配下達は素早く華麗に銃弾を躱し、次々と連合軍の兵士達を切り刻んでいく。


寧ろ発射した弾が味方に当たってしまう始末だった。


「撃つのを止めさせろ!味方に当たる!」


連合軍の将校の一人が無線で防衛陣地に呼びかける。

「撃ち方やめ!手動に切り替えて待機しろ!」


防衛陣地の将校が叫び、陣地からの射撃が止まった。


バシュッ!ブシャッ!


同時にその将校は頭を遠くからの射撃で、粉微塵に吹き飛ばされた。


バシュッ!バシュッ!バシュッ!


次々と兵士達の頭が吹き飛ばされていく。


ガガガガガガッ!!ガガガガガガガッ!


機銃や機関砲が兵士毎次々と射撃で吹き飛ばされていく。


「私達の邪魔をする異教徒は一人だって逃すモノですか!」


派手な色の機関銃を持った少女が車両の上でニタリと笑う。


「コルテス様♡周囲のゴミ掃除は終わりました!」


コルテスは少女の頭を撫でる。


「うん、良くやってくれた。後は手筈通りに頼む」


「はいっ♡!」


少女は満面の笑みで答える。


だが後ろから出てきた女性傭兵を見て、スッと表情が変わる。


少女はその女性傭兵に対して呼びかける。


「アリアドナ!」


「何?」


「コルテス様に何かあったら、大好きな骨董品のパソコンと一緒にジャンクにして溶鉱炉に放り込んでやるから」


「大丈夫。この局面でミスはしないから」


アリアドナはニコッと少女に対して微笑みかける。


「~~~~っ!」


少女はカーッとなり、敵兵に向かってその身体には見合わない大きさの機関銃を撃ち始めた。


「さあ行くか。頼んだぞクレシエンテ、ス-ル、リト二ウス」


「了解」


「わかりました♡!コルテス様!」


「承知致しました!指揮官殿!!」


コルテスと彼の指揮する二つの小隊は中央の巨大な建物に向かって駆けだした。


コルテスの小隊は正確な射撃で現れる敵兵を次々と吹き飛ばしていく。


建物に侵入すると四方から射撃が放たれたが、銃弾が軽装甲兵の身体に当たると滑るようにして跳ね返り、軽装甲兵達は次々とナイフやブレード等の近接武器で敵兵にトドメを刺していった。


次々と現れる警備ロボットや兵士達をいなしながら建物の奥に進んでいく。


「止まれ。何か居る・・・・


次の瞬間、通路の横から鋼鉄の扉を蹴破ってアーマーを着用した巨大な筋肉の塊みたいな巨人が出てきた。


「ふしゅるるるるる……」


(連邦のクソ肉袋共め。こんなモノ・・まで連れて来てやがったか)


筋肉の塊みたいな巨人は軽装甲兵達目がけて巨大なハンマーを振り回し、軽装甲兵達が耐えきれずに吹き飛ばされて行く。


「一斉射撃!!」


巨人に向かって小隊の全火力が叩き込まれるが、少しよろけるだけでズシズシと前に進んでくる。


「射撃やめ!俺が相手をする」


「社長」


アリアドナが窘めようとする。


「大丈夫だ。面白いモノを見せてやる」


そう言うとコルテスは銃とブレードを部下に預け、巨人に突っ込んでいく。


巨人はハンマーをコルテス目がけて振り下ろす。


しかし、コルテスの姿はそこに無かった。


巨人は周囲を見回すが何処にもコルテスの姿は無い。


アリアドナは驚嘆した。コルテスは巨人の頭上に片手で逆立ちをしていたのだ。


巨人は頭の上のコルテスに気付くと頭の上の敵を払うように頭上で腕とハンマーを振り回した。


だが、コルテスは既に巨人の正面におり、巨人の心臓辺りに思い切り手刀を差し込む。


手刀は何かで熱せられているのか巨人の肉と内臓を焼き、巨人は呻きと悲鳴を上げる。


巨人がうずくまるとコルテスは巨人の膝を思い切り殴り、膝を砕いた。


巨人が倒れ込む。


コルテスは巨人に飛びかかるとアーマーを皮膚毎剥がし、首を極めるとそのまま千切り取ろうとした。


「グオオオオオオオッッ!!!」


巨人の必死の叫びが周囲に木霊する。


「オラ!暴れるんじゃない、この肉の塊がッ!!」


そう言いながらコルテスはブチブチッと巨人の首を捻り切った。


巨人の首からはドス黒い色の血が吹き出し、降りしきる血がコルテスの装甲義体を染めていく。


だが、彼は戦闘機械その物の冷静な表情を崩さなかった。


「行くぞ。後もう少しだ。」


彼の部下達はすぐさまに体勢を立て直し、駆け出した。

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