大変です!まさかの理由があった!?

大騒ぎになったダンジョンの入口で、多くの生徒が興奮していた。


「ドラゴンの素材なんて初めてみたぞ!?」

「本当に倒したんだ!」

「真っ二つになってたり、黒焦げだったり、どうやって倒したんだよ!?」


ザワザワッ

ザワザワッ


滅多にお目にかかれない素材に、別の意味で大騒ぎであった。


「シオン君達!詳しい説明をお願いしたい!学園長室まできて欲しい」


他の教師が呼びにきた。シオン達は素材を受付さんに頼むと学園長室へ向かった。


「さて、皆さんに怪我がなくて良かったわ。もう一度詳しく説明お願いできるかしら?」


学園長は長寿で知られるエルフであった。長い間、生徒を見送っている皇帝からも信用の厚い人物である。


シオンは『フィーネ学園長』に事の顛末を話した。


「それでですね!みんな酷いんです!ドラゴンを一撃で倒せる聖剣とか持ってて、私だけ持ってなくて─」


ちょっとシオン、話が脱線しているよ!?


「コホンッ!話はわかりました。他の階層でも異常がないか高ランク冒険者に調査させましょう。なんとか来週には生徒達にダンジョンへ潜れるようにしたいですからね」


このスター学園ではダンジョンでのクエスト達成が単位になっているので、潜れなくなると大変なのだ。


「フィーネ学園長、1つ提案があるのだが私達にもその調査を手伝わせて欲しい!」


レインが飛んでもない事を言ってきた。


「ちょっと!授業はどうするのよ!?」

「なーに、私達は授業の単位は充分に取れているから一週間ぐらい問題ないだろう?」


イヤイヤイヤ!?

私は貴女達みたいにチート武器持ってないんだからね!死にたくないんですが!?


「まぁ、確かに俺達ならダンジョンの構造もよく知っているし、ドラゴンにも対応できるから効率良く調査できるしな」


ちょっとガイア!いつもはケンカしているのに、こういう時だけ賛同しないでよ!


「ふむ、そうね。あなた達であれば実力的に問題はないわね。よろしい、単位もあげるので初心者ダンジョンの調査を依頼します」


「任せて下さい!」


ええぇ~マジですか!?


「ただし、こちらも冒険者を雇いますので、お互いに協力して当たって下さい」

「わかりました」


こうしてシオン達は初心者ダンジョンの調査を受け持つことになるのだった。



「フィーネ学園長、よろしかったのでしょうか?」


シオンの担任教師であるソフィアが心配そうに言ってきた。


「そうですね。心配ではあります。一般的には秘密にしてありますが、『魔王』が復活したとの情報があります。『勇者』であるシオンさんが魔王に狙われる可能性がありますからね」

「なるほど、勇者は『男性』と決まっています。だから女装させて魔王の目を欺いているのですね!」


フィーネ学園長は首を振った。


「いいえ、美少女少年なんて国宝級の………いえ、全世界の宝なのですよ!愛でる為に決まっているでしょう!!!!!?」


急に大声で叫ぶフィーネ学園長にドン引きするソフィアであった。この人は王妃様と同類であったのだ。なんてこったい!


「コホンッ、今回のダンジョンの異常が魔王のせいなのか見定める必要があります。シオンさん達には1階層から探索してもらい、高ランク冒険者には10階層から調査してもらいます。初心者ダンジョンには各階層を往き来できる『転移装置』がありますからね。それでシオンさん達がまた襲われるようなら…………」


学園長は不敵な笑みを浮かべて言葉を区切った。


『まさか学園長はシオンを囮に使おうとしている?』


担任の教師であるソフィアは不安になり、シオンの無事を祈った。


こうしてシオンの受難は続くのである。




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