断罪

王子は義母の公爵夫人とマチルダがやった行いを知っていた。


「物置小屋に閉じ込めて、食事を与えなかったそうだな」



義母とマチルダは青くなったが、証拠なんか何もないはずだった。


「よく太っているではありませんか」


聞いている方は目を疑った。ダーナは、ほっそりと痩せている。


「大したことではありません。家を代えただけで」


マチルダも言い添えた。


「それよりも殿下、ダーナと結婚するくらいなら……」




「では、お前たちも物置小屋に閉じ込められればよかろう」


「え? なぜですの?」


「大したことではないと言った。それなら、大したことではないのだろう。同じことをするよう、私から使用人どもには厳重に申し伝えよう」


同じこと? 二人は真っ青になった。


「そんなことをしたら飢え死にしてしまいます。殿下はそんなおそろしいことをなさるおつもりですか?」


「じゃあ、どうしてダーナになら、してよいのだ?」


二人は首を傾げた。ダーナが死んだって誰も気にしないだろう。外聞が悪いくらいなものだ。それに財産の分け前が増えるから、好都合だ。


「ダーナには当然でございましょう? そんな醜い娘」


「では、醜かったら何をしても許されるのか?」


そんなことは考えたことはなかったが、義母とマチルダは素直にうなずいた。私は醜かった。少なくとも、家にいた時は。そんな娘が幸せを願うことなど許されない。


義母とマチルダの考えは手に取るようにわかった。


だけど、フィル王子は違った。



「美しさと醜さは、比べないとわからぬものだ。ロジャー」


ロジャーは、わけがわからないまま、呼ばれて出て来た。


「ダーナとマチルダ、どちらが美しい?」


ロジャーは正直なところを答えた。


「ダーナだ」


王子は冷たく二人に言った。


「見かけが悪いなら、何をされてもよいのだったな?」

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