恋瀬川葵のエピローグ

 窓から朝日が差し込む頃には、お互いに汗とか体液でベタベタだった。


 効きすぎるぐらいに寒いクーラーの風と所々冷たいベッド。


 電池切れのおもちゃみたいに、ぐっすりと眠るお兄さんお手を、ぎゅっと握った。


「辛かったんだね……ごめんね」


 お兄さんがこんなになっちゃったのは私のせい。


 あの日の放課後、偶然にもお兄さんと琴音先生のキスシーンを収めてしまった私は、自分の欲求に勝てなかった。


 『お兄さんに幸せになってほしい』そんな気持ちを忘れて、お兄さんの手を握る事を選んだ。


 お兄さんがこんなになったのは私のせい。私が琴音先生とお兄さんを引き裂いてしまったせいなんだ。


 だから、せめてこれから先、お兄さんを幸せにしてあげたい。


 私なら絶対に、これから先何年、何十年もお兄さんの隣にいるから。


 絶対に、好きな人が消えて悲しい思いはさせないって誓うから。


 お兄さんの好きを全部受け止めるから……。


 だから。


「幸せになろうね。翔先輩」


 今度は私が、この人のヒーローになるんだ。


 あの日、私を助けてくれた時みたいに。



エピローグ   これから。


 

 

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