第168話 七海ミサキとコラボ回⑤-乗り越えられない試練-
事前連絡なしの複数話更新のため記載しています。
分割の分割です。
本日二話更新しますので、お気を付けください。
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槍を用いた近接戦での完全敗北。
掌底本体は避けたとはいえ、カウンターの巨大掌底になすすべなく倒れてしまった。
真宵アリスは論理的な思考を好んでいる。無表情で言葉を発しないことが多いが、実は熟考に熟考を重ねるタイプだ。わざわざ説明しない。だからよく過程をすっ飛ばして結論を出してしまう。
今回は『自分では勝てない』と心の中で結論を出してしまった。
女装ゴリラ攻略に必要なのは近接戦ではないと割り切ったのだ。
七海ミサキはそれが非常に気に入らない。
再戦前の作戦会議は紛糾した。
七海ミサキは真っすぐに真宵アリスの瞳を見つめて言い放つ。
七海ミサキ:「それは違うと思うよ。女装ゴリラは真宵アリスの悪夢の具現化。ならば今日の主役はアリスちゃんだよ。女装ゴリラを倒すのはアリスちゃんであるべきだ」
真宵アリス:「でも私では勝てませんよ。それともミサキさんには槍で打開する方法でもあるですか?」
七海ミサキ:「ないね」
真宵アリス:「だったら遠距離攻撃主体にするべきです。私が囮となってエネルギーを消耗させて、ミサキさんがスナイパーライフルで狙うのが最適解です」
七海ミサキ:「だから言っているでしょ。それは間違っているから」
真宵アリス:「正解が分からないのにどうして間違いと言えるのですか?」
七海ミサキ:「わかるよ。だって面白くないから」
真宵アリス:「面白く……ない?」
:なんか凄い戦いだったな
:フライングゴリラインパクトのときまではゲーム感あったのに
:そこからスロー映像解説がないと理解できない高速戦闘が始まると思わない
:ワールドクラスのプロ格闘技の試合並みにわけがわからん
:七海ミサキが理不尽な全方位攻撃にやられてから秒だった
:完全初見殺し
:むしろあれを避け切ったアリスの超反応があり得ないから
:コンテナの三段目いたと思ったら一瞬で十メートルぐらいの間合いを詰めての高速突き
:それを余裕でパリィしてのカウンター
:アリスのトラウマの掌底
:その掌底すら石突をたたきつけて避けるアリス
:最後のエネルギー掌底はエフェクトからして回避不可だろうな
:近接戦禁止の戦い
:あの槍を余裕で防ぐ女装ゴリラがおかしいだろアレ
:真宵アリスも女装ゴリラも両方異常だろ
・
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:あれ? 珍しく揉めてる
七海ミサキ:「ねえアリスちゃん。私にはずっと嫌いな言葉があったんだ。『神は乗り越えられる試練しか与えない』。聖書の言葉らしいよ。どんな困難でも乗り越えられる。諦めてはいけない。希望を持て。そんな意味で使われている」
真宵アリス:「聞いたことはあります。昔のドラマのセリフだったはず」
七海ミサキ:「私はどれだけ努力しても上にたどり着けなかった側の人間だからね。その言葉がどうにも気に入らなかった。山に登って広大な大自然を前にしたときとかはよく思っていたんだ。これ遭難したら死ぬよね。神様は乗り越える前提で自然を作ってないよねって」
真宵アリス:「えーと……言いたいことはわかります」
七海ミサキ:「人事を尽くして天命を待つという言葉は好きだよ。道具の準備。正しい知識。事前の情報収集。全て大切で怠ってはいけない。予期せぬ事故で遭難しても生存率が上がるからね。それでも死ぬときは死ぬけど。言葉通り天命だね。悪い結果も当然あり得る」
真宵アリス:「うん。……うん? うーん?」
七海ミサキ:「それが最近知ったんだけど、私が嫌いな『神は乗り越えられる試練しか与えない』は誤訳なんだって。試練って訳されているけど、元々は悪事への誘惑とかそういう意味らしいの。つまり神様を信じていれば道を誤らないはず。そんな言葉だった。誤訳でずっと嫌っていた私の時間はなんだったんだろうね」
真宵アリス:「この話がなんだったんですか!?」
七海ミサキ:「なんだろうね?」
真宵アリス:「ちょっとミサキさん! ふざけないでください。真面目に攻略しましょうよ!」
七海ミサキ:「アリスちゃん。これはゲームだよ。いつから真面目に攻略するのが目的になったの?」
真宵アリス:「……えっ?」
七海ミサキ:「休憩前まで楽しそうにしていたのに。休憩時間中もずっと真剣に考えこんでいたみたいだし。槍を防がれたのがそんなにショックだった?」
真宵アリス:「そう……かもしれません。少し熱くなっていたようです」
七海ミサキ:「上には上がいる。認めたくないけど認めるしかない。意固地になりたくないから割り切る。前に進むためならばそれも正解かもしれない」
真宵アリス:「そうです。近接戦では勝てません。だから遠距離攻撃主体で――」
七海ミサキ:「――だからといって諦める理由もない。相手のほうが上と認める必要もない。何度でも挑もうよ。そして楽しもうよ。これは神様の試練ではない。人間の用意したゲームだからさ。攻略法は用意されているよ。つまらない回答じゃない。面白くて挑みがいのある攻略法がきっとね」
真宵アリス:「……ミサキさん」
七海ミサキ:「アリスちゃんは自分の中で答えが決まってからしか話さない癖があるよね。もちろんそのあとの話し合いで、自分が間違っているとわかったら訂正してくれる。人の話にちゃんと耳を傾けてくれるけど。でもディベートじゃないんだから、たまには答え出すための相談もしてほしいな。一緒に考えたいから」
:確かにそんな言葉あったな
:アリスの昔のドラマ発言に時の流れを感じる俺氏
:わかる……山登ってたら自然に勝てないのわかる
:ビギナーからルナティックまでマジで難易度が天候に左右されるから天気予報は重要
:誤訳だったの!?
:困難に立ち向かう意味じゃなかったのか
:本当になんの話だw
:珍しくセツにゃん以外にツッコミを入れるアリス
:あーなるほど
:わざと関係ない話で考えさせて視野狭窄に陥っているアリスを諭したか
:ミサキチって飄々としていてつかみどころのないタイプだけど面倒見いいよな
:ノリのいい巻き込まれ属性の苦労人だぞ
:ミサ姉
:三期生次女感ある
:ディベートじゃないか
:ディベート力が重要視された若い世代にはアリスみたいなタイプ多いかも
:自分の中で答えが出てないと発言してはいけないみたいな風潮あるよな
:SNSの存在が当たり前で育った世代とも言える
:もちろん答えがないのにダラダラ話して周囲の邪魔をするのはよくないけど
:日常会話にそれを適応するとなにも話せなくなる
:一緒に考えたいと言ってくれる人がいるのが大切かもな
七海ミサキ:「アリスちゃんが接近戦は無理と判断した理由は、女装ゴリラの防御能力の高さ。あの巨大な掌底の壁のせいでいいよね」
真宵アリス:「はい。あの巨大な掌底は防ぐことはできません。接近戦に攻略の活路はないと判断しました。だからエネルギー切れで無敵状態が解除されたときに、スナイパーライフルで狙い撃ちするしかないと」
七海ミサキ:「まずその誤りから正すよ。アリスちゃんは経験ないかもしれないけど、信じられないことに一部の例外は銃弾を避けるからね。本当にいとも簡単に避けるんだよ? それに防ぐ。弾き返す。切る。だから無敵状態が解除されても、無策で狙うだけだと当たらないと思う」
真宵アリス:「そんな……ではどうやって攻撃すれば」
七海ミサキ:「……それをアリスちゃんが言うの?」
真宵アリス:「ん?」
七海ミサキ:「まあいいや。さっきは私が先にやられてしまったからアリスちゃんが接近戦で奇襲をかけるしかなかった」
真宵アリス:「それは完璧に防がれました」
七海ミサキ:「防がれたね。私が思うに敗因は私にある。私が先に死亡した時点で詰んでいたんだと思うよ。二人がそろっていないと攻略できない気がする。メタな視点だけど一人で攻略できる仕様になってない。そうじゃないと私とアリスちゃんの二人で挑まされている意味がないから」
真宵アリス:「では近距離と遠距離同時攻撃ですか?」
七海ミサキ:「いやそれも無理だと思う。さっき遠距離攻撃が通じないといった根拠を付け足すと、あの掌底の壁は遠距離攻撃も完全に防ぐ気がするから。たぶん無敵状態の解除直後は罠だよ。どう攻撃しても防がれる」
真宵アリス:「無敵状態の解除直後は罠。だからといって女装ゴリラはシルバーバックではないですよ?」
七海ミサキ:「無敵状態にも穴はないか」
:あの掌底を避けるのは無理だな
:つーかアリスは掌底自体は超反応で避けて距離取っていたから
:接近戦を諦めて遠距離攻撃を軸にするのアリスの言い分が正しい気がするけど
:www
:確かに銃弾避ける例外いたわwww
:信じられない防ぎ方をする暴走メイドロボがいたな
:集団で取り囲んで強力な武器で攻撃しても捉えられないを光景をすでに見てな
:アニバーサリー祭で……うっ……頭が
:お前が言うなw
:おい一部の例外w
:ミサキチの遠距離攻撃も通じないセツの信ぴょう性がえぐい
:なるほど前戦はミサキチが死んだ時点詰んでいたか
:近遠同時攻撃も無理とか
:掌底はエネルギー壁だから遠距離狙撃も防ぐか
:今が攻撃するタイミングだと露骨な隙だと思わせておいて罠とかえぐい
:無敵状態に穴はない
:どうやって倒すんだこれ?
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