第79話 三期生オフコラボ配信①-真宵アリスが外出すると事件は起きる-
スランプ中の真宵アリスのために行われたオフコラボ。
すぐに編集が行われて収録当日の夜には配信が開始された。
この集まりは慰労目的……のはずだった。
配信の冒頭からすでに真宵アリスは疲れ果てている。
リズベット:「つい始まった三期生オフコラボ配信。配信は今日の夜スタート。あたし達は配信日の朝からグランピングのテント内で収録しております。最近ヒレ酒にハマり始めた皆のリズ姉こと虹色ボイス三期生のリズベット・アインホルンです」
七海ミサキ:「実はすでに色々とありました。さすがトラブルの神様の寵愛を受けし娘、真宵アリス。最近檻に入れられた状態で、女子高生のセーラー服を着たおっさん集団と着ぐるみパジャマを着た怪物のサバゲーを実況させられた三期生の七海ミサキです」
桜色セツナ:「アリスさんが外出すれば事件は起こる。最近子役時代の友達に久しぶりにあったら『氷室さくらは死んだのね』と悲しまれた三期生の桜色セツナです」
真宵アリス:「……お外もうヤダ」
桜色セツナ:「アリスさんアリスさん自己紹介はしましょう」
真宵アリス:「やる気充電切れ。やさぐれモード起動。皆さまお休みなさい。最近は色々スランプ中のダメダメ型駄メイドロボ三期生の真宵アリスです」
:はじまったぁぁーーー
:ヒレ酒w
:ミサキチ伝説の神回ありがとう
:全米の腹筋を破壊するハリウッド級の超大作おっさんサバイバー
:マジでゴールデンラズベリー賞なら狙えそう
:おっさんの汚い映像見せんなw
:実況(七海ミサキ)着ぐるみパジャマの怪物(虹色ボイスのインストラクター)セーラー服に白ブリーフ吐いたおっさん素人集団(虹色ボイスの専務と愉快な仲間たち)
:面子でわかる虹色ボイスのヤバさ……あと吐くなよ本音出てるぞ
:通常のサバゲーではありえないガチ罠痴態の連続……落とし穴に消えるおっさん……吊るし上げでブリーフ全開のおっさん……もう腹筋は破壊されたので今度はセーラー服の女の子でお願いします……癒やして
:欲望に忠実なリクエストに草
:氷室さくら? 落ち着いた可愛い子だったね
:セツにゃんと同一人物の噂があったな……否定されたけど
:おい勝手に否定するなw
:アリスなにあった? スランプ?
:やはり引きこもりにはグランピングもきつかったか
:やさぐれモード
:引きこもりにお外は無理でしょ
リズベット:「まだ始まったばかりなのに、アリスちゃんのテンションはすでに底辺」
七海ミサキ:「朝からすでに大暴走だからね。真宵アリスは空を駆けた」
桜色セツナ:「悲しい事件でした。係員の人も困惑しながら注意してましたし」
真宵アリス:「……子供なんか嫌いだ」
:本当になにがあったw
:空を駆けたw
:なるほどいつも通り暴走か
:係員の人が困惑って
:なぜアリスはいつもトラブるw
:子供が子供を嫌ってるw
七海ミサキ:「まずは今日の朝の出来事から説明するね。このグランピング場には最近人気の高所アスレチックエリアが隣接しています。流行りですね。オフシーズンと言えど人気のエリア。人が多くなると配信のネタにもできない。私達がアスレチックを楽しみたいならもう朝一に突撃するしかないと挑みました」
リズベット:「そこであたし以外の虹色ボイス三期生はやっぱりおかしい。つくづくそう実感させられたわ」
七海ミサキ:「酷いことを言うね」
リズベット:「だってこの娘達あんな場所でタイムトライアルするのよ! 場所は木の上の高所アスレチックコース! 高い場所で地上十メートルはあるの。もちろん命綱付き。コースの長さもそれなりにあるし、係員の人に聞いたら渡り切るのに平均十五分かかるのよ! 普通のうら若き乙女なら『きゃあ』『こわーい』って叫ぶところなの! それなのにタイムトライアル! まずセツにゃん! タイムは?」
桜色セツナ:「七分二十四秒です。急ぎ過ぎて一度足を踏み外してから慎重になったのがタイムロスの原因ですね」
リズベット:「はいおかしい! タイムロスとかないから。でもまだ常識的なタイムでありがとう。で、常識人面している七海ミサキさんのタイムは?」
七海ミサキ:「五分三十三秒。やっぱり揺れる足場では地上みたいに上手く走れないね」
リズベット:「この非常識! 走る場所じゃないからね! あれ地上十メートルだから。遠くを見れば山々の絶景が広がる大パノラマ。一歩踏み出せば揺れるし回る。風が吹いてもめちゃくちゃ揺れる。木造だからかなり軋む。命綱なしでいちゃダメな場所なの! 本当に凄く怖かったんだから! そして本命真宵アリスちゃんのタイムは?」
真宵アリス:「……三分七秒。命綱さえなければ三分切れてました」
リズベット:「生き急ぐな!」
:高所アスレチックでタイムトライアルw
:すげー
:三人ともほぼノンストップだな
:高所アスレチックを歩くか走るか黒猫メイドロボ伝説するか
:黒猫メイドロボ伝説w
:アリスに対するツッコミwww
:真宵アリスは空を駆けた
七海ミサキ:「でもリズ姉がもう少し早かったらあんなことにはならなかった。リズ姉の所要時間は?」
リズベット:「ぐっ……三十三分十秒。かかり過ぎたのは認めるわよ。でもあんなことになるとは思わないでしょ」
桜色セツナ:「人が集まればトラブルが起こる。だからあまり人が来ないうちに朝一でアスレチックエリアに直行したんですよね」
リズベット:「あっーーーもう! そうよ! あたしが高所アスレチックで怖がって動けなくなったからあんなことになったのよ。アリスちゃん本当にごめんね」
真宵アリス:「いえ……リズ姉に謝ってもらうわけには」
七海ミサキ:「まあ誰が悪いってわけでもないからね」
桜色セツナ:「そうですね。だからアリスさんもリズ姉も気にしなくていいと思います。まさか上空でリズ姉が高所アスレチックに挑戦している間に、アリスさんが十数人の子供集団に追い駆け回されることになるなんて想定できたはずないですし」
リズベット:「……下を見たら地上でアリスちゃんが子供から逃げ回っていて困惑したわ」
:リズ姉ポンコツ
:高所恐怖症あるある
:謝ったw
:子供に追い駆け回されるアリスwww
:外に出るとアリスっていつも追い駆け回されているな
七海ミサキ:「すでにアスレチックエリアに集まっていた子供たちの目には鮮烈に焼き付いたんだろうね。自分たちとあまり背の高さが変わらない黒猫パーカーの女の子が上空を疾走する姿が。アリスちゃんの走りを下から見ていたときにはすでに『忍者だ』『ニンジャニンジャ』と子供がはしゃいでいたし」
桜色セツナ:「だから本当にリズ姉のせいではありません。リズ姉を待っている間に事件が起こっただけです。子供から逃げるアリスさん。そのアリスさんに触れることができず熱くなっていく子供達。もうアスレチックそっちのけで地上では壮絶なバトルが繰り広げられただけで」
リズベット:「本当にどうやったらあんなに子供が集まるのやら」
七海ミサキ:「結局アリスちゃんは最後まで子供達に触れられることなく逃げ切ったからね」
リズベット:「え? 本当に逃げ切っていたのあれ」
桜色セツナ:「虹色ボイス事務所で暴走したときと同じです。子供の手を全てすり抜けたんですアリスさん。そんなことをすれば子供達が躍起になるのに」
リズベット:「だからあんな大騒ぎに。でもそれならどうして真宵アリス空を駆ける事件にまで発展したの?」
真宵アリス:「……子供に」
リズベット:「子供に?」
真宵アリス:「…………コオロギを投げつけられた」
リズベット:「えっ!? コオロギ?」
桜色セツナ:「実はアリスさん虫が大の苦手らしくて。今日だってグランピングだし『虫はいませんよ』と呼び出したんです」
七海ミサキ:「常識的に考えてどの季節でも山にはなんらかの虫いるよね」
真宵アリス:「……虫いた。それもなんか微妙に飛ぶ長翅タイプのコオロギ。子供の手から離れたら翅を広げて! ブワァァサアァって私の方に飛んできたからビックリした」
桜色セツナ:「『ニャアァァァァァーーーーーっ!』ってアリスさんの可愛らしい悲鳴がアスレチックエリア中に響き渡りました」
七海ミサキ:「それで木を駆け登っちゃったわけ」
桜色セツナ:「本当に凄かったです! ほぼ直立している木を三メートルぐらい駆け登ったと思うと隣の木に飛び移って。また駆け登ったらまた飛び移って。気づいたら高所アスレチックのつり橋の上に着地してましたから」
リズベット:「……それもあたしの目の前にね。つり橋の上に突然出現したのよアリスちゃん。目が思いっきり合った。私はポカンとしたわ。もちろん周りもポカンよ。そりゃあ地上十メートルを数秒で登り切られて乱入されたら唖然とするしかないわよね。アリスちゃんはすぐに状況に気付いて、不安定な足場なのに『ごめんなさい』って綺麗に頭を下げてさ。そのままアスレチックの終点まで誰よりも早く駆け去ったのよ。……地上十メートルを命綱なしで」
:忍者w
:アリスはやっぱりアリス疾風伝なのか
:囲まれているのに子供が触れることもできないって相当だな
:そりゃあ子供は大はしゃぎで追い駆け回すか
:アリスには誰も触れられない
:コオロギw
:長翅タイプか
:あかん……種類によっては飛ぶ黒い悪魔にしか見えん
:ニャアァァァァァーーー!
:え? 木を駆け登って隣の木に飛び移った?
:いやいやいやいや……ねーよ
:本当に猫かな?
:……高所アスレチックに乱入ってどんだけ
:一人で降りれてえらい!
:真宵アリス空を駆ける事件w
七海ミサキ:「アスレチックの上ではそんなことがあったんだ」
リズベット:「あまりの驚愕にあたしも恐怖を忘れたからね。あんなに足がすくんでいたのにアリスちゃんが気になってあっけなくゴール。アスレチックのゴールではアリスちゃんが係員の人に怒られているし」
桜色セツナ:「係員の人も困惑していましたね。『このアスレチックは命綱が必要なんです。普通の人には。あなたには必要ないかもしれないけど他の人が真似したら困るんです。確かにアスレチックに木を駆け登っての乱入禁止と書いてないのはこちらの落ち度です。でも地上十メートルですよ。十メートル。それをあんなに早く駆け登るなんて常識ないんですか』って。たぶん本当に想定外のトラブルだったんでしょうね。言葉が乱れてました」
真宵アリス:「……しゅん。命綱必要ないと思われた」
リズベット:「あるの?」
真宵アリス:「……雨降ったあととか強風のときはさすがに欲しい」
桜色セツナ:「じゃあやっぱり今日は必要なかったんですね」
七海ミサキ:「まあ私からも謝っておいたし大丈夫だと思うよ。ここの人とは知り合いだし。悪戯で乱入したわけじゃないことはわかってもらえたから。虫に驚いてアスレチックコースまで跳び上がったことについては理解に苦しんでいたけど」
真宵アリス:「ミサキさんありがとうございます」
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