第80話 三期生オフコラボ配信②-ファッションチェック-
野外はいとも容易く真宵アリスの心をへし折った。
さすがにこの状況はよろしくない。
桜色セツナが奮起する。
桜色セツナ:「さて現在の状況を説明し終えました。次はファッションチェックしましょう!」
リズベット:「ファッションチェック?」
桜色セツナ:「はい! 古来より女性が集まれば互いの服装を褒め合い、内心では勝った負けたとマウントを取り合うと言います」
リズベット:「……酷い偏見だと思うよそれ」
桜色セツナ:「そうなんですか? 子役をやっていたのでそういう普通の人付き合いとは縁がなくて。実はずっと憧れていたんです!」
七海ミサキ:「あー確かに女友達同士で出かけると行われるかも。私も経験ないけど」
リズベット:「……あたしもなし」
桜色セツナ:「まさか全員ファッションチェック未経験? いえアリスさんなら!」
真宵アリス:「引きこもりにあるわけない」
桜色セツナ:「……ですよね。でも意外です。ミサキさんもリズ姉もないなんて」
七海ミサキ:「私は女友達と一緒に買い物に行っても『この服どう?』」って聞かれる立場だったから」
真宵アリス:「女にモテる女」
桜色セツナ:「納得の理由ですね」
リズベット:「……あたしは友達との会話で服の話題が出たことがないから」
桜色セツナ:「どうしてですか?」
真宵アリス:「セツにゃん。あまり追求したらダメ。私はリズ姉の言いたいことわかる。タイプは違うけどたぶん私もリズ姉側の人間。社交的になってもファッションチェック対象外」
桜色セツナ:「ファッションチェック対象外?」
真宵アリス:「ねこ姉もそうだったらしい。この世界は規格外に厳しいの。私みたいに少し背が低くてもダメ。背が高くてもダメ。それに装甲が厚くてもダメ」
桜色セツナ:「……装甲? なるほど! 胸部装甲が厚いとファッションでハブられるんですね」
リズベット:「胸部装甲言うな!」
:ファッションチェック?
:偏見とは言い切れない世界だな
:普通のことに憧れるセツにゃん(涙)
:全員やったことなかったw
:ミサキチは同性にモテるタイプだからな
:なぜか誇らしげなアリスw
:胸部装甲が厚いwww
:リズ姉も大変だw
桜色セツナ:「全員ファッションチェックしたことなくてもかまいません。まず言い出しっぺの私からファッションチェックスタートです。アバターでは服装がわからないので説明しますね。下から白いハイキングシューズに淡い青のカラーパンツスタイル。上は白ブラウスに桜色のロングジャケットです。クルリと一回転してと。どうですか?」
リズベット:「なんというかプロのモデルみたいね」
桜色セツナ:「子供服ブランドならモデルしてました。動きやすさ重視。イメージカラーの桜色でアピールです。氷室さくらのときは青系で統一してワンポイントで桜アイテムをつけたりしてましたね。昔から流行のトレンドとかあまり興味なくてイメージカラー優先なんです」
真宵アリス:「可愛い!」
桜色セツナ:「ありがとうございます!」
七海ミサキ:「じゃあ次は私かな。と言ってもいつも通りのラフなアウトドアファッションだけどね。今日は明るい青いウインドブレーカーに黒いカーゴパンツ。靴が黄色と黒のアウトドアブーツね」
リズベット:「なんというか本当にアウトドアファッションよね」
桜色セツナ:「ミサキさんのイメージカラーは青ですか?」
七海ミサキ:「イメージカラーとか特にないかな。ただ私はキャンプも釣りも基本的にソロだから遭難対策として明るい色を身に着けるようには気を付けてる。山だと青色。海だと赤色か黄色のウインドブレイカー。ウインドブレイカーは撥水性高いし季節も環境も選ばない。それに薄くて軽いから他とも組み合わせやすくて重宝しているよ」
真宵アリス:「遭難対策」
桜色セツナ:「さすがミサキさん。やっぱり慣れている人はそういうところを気にするですね。では次は問題児のリズ姉さん」
リズベット:「えっ! あたし問題児なの!? そんなにおかしな格好かな?」
七海ミサキ:「いや服装としてはおかしくないし、似合っているよ」
リズベット:「そうだよね! えーと服装は下から動きやすいように紅いスニーカーにデニム。上はゆるふわロングのベージュニットセーター……だけど……あれ変?」
桜色セツナ:「変ではないです。普通に似合っている外出着ですね。アウトドアなのに」
七海ミサキ:「うん……一緒にキャンプに来てその服装だと少し困るかな、ってぐらい」
桜色セツナ:「具体的に足回り弱いです。だから高所アスレチックで時間がかかるんですよ」
リズベット:「スニーカーだよ! ダメなの? それに今日はグランピングだから別に大丈夫でしょ!」
真宵アリス:「リズ姉リズ姉」
リズベット:「アリスちゃん! アリスちゃんならわかってくれるわよね!」
真宵アリス:「山舐めんな!」
:さすがセツにゃん
:画像ないの?
:昔の画像なら掘り出せるけど
:あっラフ画イラスト出た
:アバター仕様だけど普通に可愛い
:次はミサキチか
:なんというか無駄がないな
:もう発言がアウトドアの人
:リズ姉問題児w
:私服ダサいの?
:宣言通りマウントの取り合い始まった
:普通に可愛い私服だった……確かにアウトドア感皆無w
:グランピングなら許容範囲だろ
:山舐めんなwww
:アリスが言うのかw
:お前が言うなw
リズベット:「ガーン!? ……一番山から縁遠いアリスちゃんに言われた。いやいや他の二人からならともかくずっとメイド服と黒猫パーカーの超絶インドア派のアリスちゃんに言う資格ないよね!」
七海ミサキ:「……リズ姉。それ悪手」
リズベット:「え?」
七海ミサキ:「忘れてない? アリスちゃんのメイド服は改造メイド服だよ。しかも環境別で改造ね」
リズベット:「あっ!? まさかアリスちゃんも今日はアウトドア仕様なの?」
桜色セツナ:「ふふん。なんのために私が言い出したと思っているんですか。ファッションチェックに憧れはもちろんありました。でも狙いはアリスさんの装備品の全容を知るためですよ」
リズベット:「……もうファッションではなく装備品って言い切ったよね」
桜色セツナ:「細かいことは置いておいて。そんなわけで真打登場アリスさん。まず手を見せてください」
真宵アリス:「ん!」
リズベット:「それは……黒い手袋?」
七海ミサキ:「いわゆる作業用手袋とか保護手袋だね。動かしやすさ重視で通常のものよりはずいぶん薄いけど、それでも素手より遥かに安全だし。ちゃんと準備していて偉い。なぜかアウトドア装備で手袋は忘れられがちなんだよね。必須なのに」
真宵アリス:「グリップ力アップ。ゲームなら防御力だけでなく攻撃力も上がる」
桜色セツナ:「次は靴を見せてもらえますか? 靴底もお願いします」
真宵アリス:「了解。ハイカットな淡いパープルのトレッキングシューズ。軽くて透湿性に優れている。防滑性が高くて岩場も大丈夫。この靴と手袋で木も登れた」
七海ミサキ:「これ本格的な登山用だね。私も似たの持ってる」
リズベット:「……いや普通の人は装備品を揃えてもあんなに早く木は登れないからね。たとえ登れたとしても木と木を跳び移れないから」
真宵アリス:「なによりソール厚があって上げ底効果の期待大!」
桜色セツナ:「アリスさん……涙ぐましい努力を……うぅぅ」
:さすがにリズ姉も言い返したw
:ついにマウント合戦か
:あ……そういえばアリスのメイド服はロールプレイングゲーム仕様だったw
:アリスのファッションを装備品と言い切るセツにゃんw
:全環境対応で揃えられる改造メイド服
:攻撃力アップw
:メイド服の解説をするまでもなく手袋と靴だけでアリスの圧勝
:アクセサリー装備も怠らないのがプロ
:なんのプロだよw
:だからって木は登れないよな
:本当にいったいどこを目指しているんだ
:上げ底効果大www
:涙ぐましい
:トレッキングシューズのソールは厚いけど上げ底効果は狙ってねーよw
七海ミサキ:「それに履いているストッキングも特殊だよね。少し厚いし、表面が凄く滑らかで」
真宵アリス:「対ヒル用で防御力高め。山で素肌晒しちゃダメ。動きやすさを損なわない程度の厚さ。でも表面は虫も止まれないぐらい摩擦系係数を極力抑えた特殊加工。もちろん全てそれだと靴がすっぽ抜けるから足先部分は別素材で少し固い」
リズベット:「対ヒル……そんなこと考慮にすら入れてなかった」
桜色セツナ:「それにメイド服もいつもより装飾が抑えめですよね」
真宵アリス:「気づかれた!? 今日はアウトドア仕様のメイド服。枝とかに引っかかりそうな装飾を省いたシンプルデザイン。撥水性透湿性防寒性耐火性に優れていて濡れても乾きやすい。あととにかく軽くて素早さアップ」
七海ミサキ:「……これがアウトドア仕様のメイド服。アウトドア動画やっているけど初めて見た」
リズベット:「そりゃあ初めてでしょうね。他に存在するのかしら?」
真宵アリス:「あとこのホワイトブリムも夜になると光るし、獣除けに爆音がなる。今はさすがに鳴らさないけど」
七海ミサキ:「夜間行動や獣除けも完備」
:耐ヒル用ストッキング
:メイド服はともかくアリスの装備品って全て一般向けにも優れたものでは?
:アウトドアやスポーツ系のガチ装備は根本的に素材から違うからな
:高機能で揃えると全て万単位
:高級素材で装備を固めるのは基本だから
:ブランド品はブランド品でも素材と機能性全振りなのがアリス
:でもメイド服なんだよな
:クラフトで自主制作の改造メイド服だからゲーム終盤でも余裕で通用する
:完全にパラメータの上昇率重視の装備品感覚だな
:アウトドア仕様のメイド服を開拓
:輝くホワイトブリムって本当に装備品にありそうw
桜色セツナ:「最後に黒猫パーカーですけど。それもいつもと違いますよね。ちらっと見えましたけど裏地が」
リズベット:「黒猫パーカーまでいつもと違うの!? 確かいつものはリバーシブル都市迷彩で裏返して被ると黒いカバンに偽装できるスキル付きだったよね」
真宵アリス:「ん。実際に見せるね。ひっくり返して、装着と」
七海ミサキ:「迷彩服」
リズベット:「リバーシブルの裏が自然迷彩のアウトドアバージョン。……もうこの程度では驚かなくなったわね」
真宵アリス:「まだだよ。セツにゃんちょっと多いから頭とか背中のファスナー開けるの手伝って」
桜色セツナ:「わかりました。うわぁ本当に多いですね。どうしてこんなところにファスナーがあるんですか?」
真宵アリス:「全部の中身を出せばわかる。……こうしてっと」
リズベット:「え? え? えっ!? 全身から草が生えた」
七海ミサキ:「……黒猫パーカーのリバーシブルの裏側がまさかのギリースーツになるんだ」
真宵アリス:「あとはサンゴーグルとガスマスクを装着すると。シュコーシュコー完成シュコー」
桜色セツナ:「完璧ですアリスさん! さすがアリスさんです! アウトドアを飛び越えた完璧なサバイバルファッションです!」
七海ミサキ:「うん……確かに完璧だね」
リズベット:「……ファッション?」
:黒猫パーカーもアウトドア仕様
:リバーシブル都市迷彩黒猫パーカーも改め凄いな
:リバーシブル迷彩服w
:ある意味予想通りだな
:えっ? まだあるの?
:全身のファスナーを開けると
:ギリースーツ?
:ギリースーツ
:ギリースーツwww
:全身で草生やすなwww
:シュコーシュコー
:黒猫パーカーのメイド服からギリースーツとガスマスクへのスイッチは斬新なファッションと言わざるえないな
:完璧なサバイバルファッション
:もうファッションチェック優勝でいいだろ
:勝てる気がしない
:ファッションマウント最上位真宵アリス勝因ギリースーツ
:本当にどこを目指したらこうなるw
リズベット:「……ねえアリスちゃん。一つ聞いていい?」
真宵アリス:「シュコーなんですかシュコー?」
リズベット:「虫嫌いなのにギリースーツで草むらとかに隠れられるの?」
真宵アリス:「…………」
リズベット:「…………アリスちゃん?」
真宵アリス:「…………ずーん。無理。もうベッドに草生やす」
リズベット:「アリスちゃん!?」
桜色セツナ:「もうなにしているんですかリズ姉!? せっかく持ち直したアリスさんのテンションが急降下ですよ! ほらアリスさんがベッドで丸くなって草むら作り出しちゃったじゃないですか!」
リズベット:「ごめん! でもつい気になって!」
:リズ姉……言ってはいけないことを
:まあ無理だよな
:俺も無理
:実際に本職でも草むらに隠れたりするときの敵は環境よりも虫らしいしな
:ベッドに草生やすなw
:アリスのテンションが下がった
:ベッドに草むらってどんな状況だよw
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