第31話 由芽ちゃんの夢の中

 深夜ホテルの部屋で、由芽ちゃんの夢に入ることにした。


由芽ちゃんの病室を出てから、この何時間か

ずっと考えていた。


“ドナーが見つかって、心臓移植の手術が成功して、あっという間に元気になって、日本に帰れることになりました。” 


ってのを当初考えていたけど、ドナーというものにあんなにネガティブな感情を持っているのなら、身体は元気になっても、由芽ちゃんの心には傷が残るんじゃないのかな。

少なくとも今は、その時じゃないって気がした。


由芽ちゃんの心臓は、50万人に1人って割合の難病。

でも会ってみた感じでは、普通の5年生よりは

ちょっと小さめってくらいの、色白の女の子。

病室でパジャマ姿じゃなく、家のリビングでゲームしてたら、病気だなんてわからないかもってくらいだった。

心臓移植しか助かる道がないから、こうしてここにいるのだろう。

だけど、俺のチカラが、夢操人としての

俺のゆめあやつりのチカラが本物なら、きっと、いや、絶対に治してみせる。


“今まで投与していた薬が効いて、劇的に、奇跡的に、心臓の機能は回復して、心臓移植をしなくてもよくなりました。あとは日本で様子を見ながら、普通の子と同じように生活できるようになります。”


俺には、医学的なことわからないから、これが

99.99999%ありえないことかもしれないけど、でも奇跡ってそんなもんじゃん!!


俺は奇跡を起こせばいい。

きっと昔の夢操人は王の為に奇跡を起こしてきたのだろうから。



 由芽ちゃんの夢の中に入った。

わっ!広い!!

由芽ちゃんの夢の中は、一面にブルーのお花が咲いている広い広い公園のような場所だった。

ちょっと小高い丘のようになっている上にベンチがあって、由芽ちゃんはその上に立ち上がり、魔法少女ユメのステッキを振り上げていた。


俺が近づくと

「うっそ!!また、くりたしょうた!!

ゆめのストーカーなの?」

と大きな声をあげた。

えっ!!!!

「俺のこと見えてるの?」

「は?暗くないんだから、普通に見えるでしょ!何言ってんの?天然?」

そうゆう意味じゃなくて……

えっと……これは、どうしたらいいんだろう。

ちゃんと夢に入れてないのか?

「由芽ちゃん、変なこと聞くけど、今って寝てるんだよね?夢をみてるんでしょ?」

「寝てる?寝てるわけないじゃん!起きてるし

喋ってるんだから」

う~ん……えっと……

「じゃ、ここはどこなんだろ?お花いっぱい咲いてるけど」

「家族でね、前に行ったことあるの。お姉ちゃんも一緒に行ったんだけど、すっごくキレイで!

また行きたいな~って思ってたんだけど、ゆめ入院することになっちゃったから」

つまり、ここは由芽ちゃんの思い出の場所。

それを夢の中で再現しているのか。

で?

今、ここが夢の中だってことは認識してないってことなの?

夢だって認識してないから、俺とも喋れちゃうのか?

じいちゃんにチカラの封印をしてもらったことが影響してんのかな?


「あれ、しょう言えば 前に むしょう先生ともここで会ったな~いつだったかな~。

なんかね~、ゆめは、珍しいって、きかないとか言ってたな~。むしょう先生も、ゆめに 見えてるの?って聞いたな~」

「むしょう先生って?」

「あっちの大学病院の先生。イケメン先生」

「イケメン先生か。あ、お医者さんってこと?」

「うん、しょう。」


『しょう』……って、『そう』って言ってるんだよな。

『そうた』が『しょうた』なんだから。

ってことは……

『むしょう先生』って、『むそう先生』


『むそう』って、『夢操』なのか!!


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