第26話 ニセモノの親子関係

 チカラの封印ってやつを、じいちゃんにしてもらった。


帰りの車の中で、おやじが

「奏大、奏大が大学を卒業して就職して、いつか誰かと結婚してってところまでが私の役目かと思っていたよ。

一般の普通の父親ってのが、どうなのかって わからないんだが。

いつまでもベッタリとくっついているのもなんだし、子離れってのがあるのかなって。

本当の子供ではないが、本当の子供ってなんだろう?って、私は奏大を本当の子供のつもりで接してきたよ」

「うん」

「奏大が、真実を知って、こんなニセモノの親子関係は解消したいと思うなら…… 

我々は、もう……」

「おやじ!!10歳までの記憶がない俺にとっては、おやじとおふくろだけが、俺にとって本当の両親だ!!

いつか、俺に結婚相手ができて、子供ができたら、その子にとってのジジババは、あなた達なんだ!!

俺のことを嫌いじゃないんなら、このままずっと、俺の両親でいてほしい!!」

車の後部座席から俺は大きな声で言った。

「奏大、ありがとう」

小さくそう言ったおふくろの声は、鼻声だった。

おふくろは、すぐに泣く。

俺が怪我をした時も、無事で良かったとか言って大泣きしたことがある。

怪我して、痛くて、泣きたいのは俺の方なんだけど!って、逆に笑っちゃったけど。

いつもいつも、俺を心配してくれた。

それは、『母親』と言う大役を与えられた責任感からかもしれなかったが、だけど、俺には母親の無償の愛に感じられていた。

俺はおやじとおふくろに愛情をもって育ててもらったのだ。

どこにでもある、普通の親子として。

それは、本当に幸せなことだったと思う。



 実家から戻ってきて、ぼーっとしていることが多かった。

大学に通い、バイトに行く毎日。

ゆめあやつりのチカラを手に入れる前と何も変わらない。

ただの冴えない大学生だ。

無敵のチカラを手に入れたような気がした。

金も名誉も手に入れられるような気がした。

スーパーヒーローみたいになれるような気がした。

だけど、やっぱり俺はなんも変わってない。

なんの取り柄もない、ただのパッとしない男で、初めての彼女にもラインで一方的にフラれるような、ほんと どうしようもない男だな。

せっかく手に入れたチカラも、どう使ったらいいのかもわからない。

また、あの黒マントの夢操のヤツに会ったらって考えただけで怖くて。

実の両親の仇だと言われても、奮い起てないくらいの小心者だ。

こんなダメダメな俺には、ゆめあやつりのチカラは使えない。

あーあ

宝の持ち腐れってやつだな……



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