第25話 ゆめあやつりをしたいのか?

 「直大と千鶴さんのお墓だ。と、言っても、遺体が出てこなかったから、埋葬されていない。

2人の使っていた物を納めて、お墓を作っただけだが。私はここに毎日お参りしている」


墓地とか霊園を見かけても、見ず知らずの人達のお墓になんの感情もわかない。

今、これが実の両親のお墓だと言われても、だった。

俺は薄情な人間なのか?

人並みだと思っているけど。

今、おふくろとおやじを、目の前で傷つけられたりしたら、怒るだろうし、相手と戦うだろう。

もしも、殺されたりしたら、怒り狂って、何をするかわからない。

そんな感情が、実の両親と言われている直大さんと、千鶴さんに対しては、わいてこない。

俺の親は、おやじとおふくろ、昌光と友恵だけだ。

だけど、さっきじいちゃんがおふくろに母親としての務めご苦労様みたいなこと言ったけど、本当に仕事として演じていただけだったのか?

今まで、両親と過ごしてきた思い出が、10歳からしかないけれど、実際は5歳からの15年間が偽りの家族だったなんて、とても信じられない。

「奏大は、どうしたいのかな?」

「えっと~……どうしたいってゆうのは、何を?」

「ゆめあやつりをしたいのか?ということだが」

「俺は……

なんにもわからない状態で、友達を結婚させて、ちょっと試すつもりで、知り合いの女の子の恋愛を壊した。

で、サークルの友達3人にロトで5万当てさせて、テニスプレイヤーの田鍋を優勝させようとして、失敗した……

俺のしたことに大義名分なんて、なんもない。

10歳の俺が、儀式を望んで、チカラを手に入れたかったのは、実の両親の復讐をしたかったからなのか、もっと大きい理想とか叶えたい夢とかがあったのか、それも今の俺にはわからない。

だから……

だから、このチカラは、俺には必要ない。

じいちゃん、ゴメン」

「奏大が謝ることではない。

奏大に復讐しろなんて思っちゃいない。

そもそも、王から離れた時に、もう終わっていたのだから。我々の存在意義は。

それを、金儲けに使うと言うのも、また然り。

時代の流れなのかもしれない。

金儲けに使ってはいけない、人を殺めたりしてはいけないと、散々言っておいてなんだが、どのように使っても構わないとも思う。

正式に儀式をしていないのに、奏大は自らチカラを発現させた。

奏大の思うようにすればいい。

チカラをコントロール出来ない奏大に、簡単なチカラの封印をすることは出来る。

でもこれは、簡単に破れる封印だ。

奏大が自分の意志で、ゆめあやつりをしようとした時には、封印は解かれゆめあやつりが出来るだろう」

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