第27話 ドナー待ってんだろ?

 4月

 俺は、大学3年になった。


バスケを久々にやりに行った帰り。

そう言えばさ~、操人の彼女大変だな~と、郷田に言われた。

“操人の彼女”

って言葉が全然ピンとこなくて、危なくスルーするところだった。

ってゆうか、やべ、俺、みんなに亜弥と別れたこと言ってなかったか……

「大変って何が?」

「なにって、ドナー待ってんだろ?アメリカで」

は???ドナーってなに?

郷田から聞いた話は、マジでびっくりだった。

なんで郷田が知ってて俺は知らなかったんだよ?


亜弥には歳の離れた妹がいた。

10歳の小学生。

その妹が心臓病で、入退院しているとは聞いていた。

でも亜弥は、お金かかるし も~やんなっちゃう!って笑っていたから、それほど深刻な状態だとは思っていなかった。

その妹が、アメリカで心臓移植することになって、今 アメリカの病院でドナーを待っている状態だと言う。

お母さんも心労から倒れてしまい、亜弥が妹に付き添ってアメリカに行っているのだと。

大学を休学して。

海外旅行でも、ホームステイでもなかったのか……


亜弥の妹について調べてみた。

小学校5年生の小西由芽ちゃん、50万人に一人レベルの難病に指定される心臓疾患があるのだそうだ。

ゆめちゃん基金ってのがあって、心臓移植の為の資金を、クラウドファンディングとかで集めていた。

この度、目標金額の2億5000万円が達成されて、アメリカへ渡航したとネットには去年の新聞記事が出ていた。

この基金が開設された日付を見ると、亜弥と俺が大学で出会った頃だった。

こんな大事なことを、俺には何も言ってくれなかったのか……

いや、言っていたのか。

妹が心臓病で、入退院してて、お金かかってやんなっちゃう、って。

亜弥は笑っていたから、そうなんだ~大変だな~、って、俺はそんな軽い受けこたえしかしなかった。

普通に考えたって、小さな子が心臓病なんて、すごく大変なことだってわかりそうなものなのに……

うち、いろいろあって貧乏だから、って。

あはは、そうなんだ~俺も貧乏だよ~、って。

最悪だ……

親身になって心配するわけでもなく、頼りになるわけでもなく……

そりゃ、フラレるわ。

サッカーの彼だったら?なんて言っただろう。

ギターの彼だったら?何をしてくれただろう。

新しく好きになった彼は、募金活動を一緒にしてくれたのだろうか。

俺は、マジで、役立たずの、どうしようもないクズ彼氏だったじゃん!!


今はアメリカのテキサスの病院で、ドナー待ちの状態らしい。


俺、テキサスへ行こう!

亜弥の妹に会って、俺を認識してもらって、ゆめあやつりのチカラで由芽ちゃんを助けてあげよう!!

それが、きっと俺の使命だ!!


 

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