第22話 伝説のポケモンマスターみたいな話

 じいちゃんの話は、伝説のポケモンマスターみたいな話で、どうしてもこれを現実として受け入れるのが難しい話だった。



「夢 操 人 と書いて、ゆめあやつりびと

第二次世界大戦後、戦犯として一族郎党死刑になり、数人がなんとか逃げ延びた。

大ジジ様と、大ジジ様の末弟、それとお側身が数人。

一緒に行動するのは目立つと、それぞれ別れて逃げることにした。

大ジジ様は、操人と書いて、そうじんと名乗り、

末弟は、夢操と書いて、むそうと名乗った。

大ジジ様の息子が私だ。

私は、10歳の時にゆめあやつりのチカラを獲た。

夢操人は、王につかえる者として、王の願うことだけを叶えてきた。

だから、主である王から離れて、ゆめあやつりのチカラはもう使い道もないものになっていた。


大ジジ様も大ババ様も亡くなり、私が60になったころだったか、お側身の話から、夢操家がゆめあやつりをしていることを知った。

大企業の社長や、芸能人なんかにゆめあやつりをして、報酬として大金を得ていたのだと。

主から命を奪われた末裔としては、それは善悪の判断がつかないものだった。

生きて、生活をしていく為には、収入を得なくてはならない。

手先が器用な者が、それを活かすように、

腕力がある者が、それを活かすように、

頭のキレる者が、それを活かすように、

夢操人がゆめあやつりをすることは、悪い事ではない、のかもしれない……

だが、王の命令で、ゆめあやつりをしていたのと、私利私欲の為にゆめあやつりをするのとでは、全然違う。

やはり、それは間違いなのではないのか?

いや、操人家は、息子の直大も、チカラを発現させられず、夢操人としてはもう私の代で終わるのだなと思ってもいたから、夢操家に対する嫉妬心もあったのかもしれない。

私は、夢操家に何度も赴き、私利私欲の為にゆめあやつりを使うなと言った。

その度に、話はつかず、追い返されるような形だった。

そんな ある日、直大と千鶴さんが、夢操家に行ってくると言った。

私も一緒にと言ったが、若い者の方が、話を聞いてくれるかもしれないからと、2人は車で出掛けて、そのまま 戻らなかった。

山道を走行中、カーブを大回りしてきたトレーラーと正面衝突し、車ごとダム湖に転落し、沈んでしまった。

その事故は、目撃者も大勢いたから、それは間違いなかっただろうけど、警察のダイバーの捜索でも、遺体は発見することが出来なかった。

私は、夢操家に殺されたのだと思った。

我々、身内にはゆめあやつりは出来ないから、トレーラーの運転手の方を操ったのだろう。

そこまでするのか、と、愕然とした。

殺すのなら、私じゃないのか?

なぜ、チカラを持たない、直大と千鶴さんが殺されなければならなかったのか……

お側身の昌光と友恵に私の養子になってもらい、奏大の親になってもらった。

奏大は、記憶を失くしているから、覚えていないだろうが、毎日毎日泣いていたよ。

本当に申し訳なかった。

まだ幼い奏大から、両親を奪ってしまったんだ。

それからは、もう夢操家とは関わらないことにした。

そもそも、私が口を出すことでもなかったのかもしれない。

どう生きていこうが、それはもうあちらの家のことだ。

直大と千鶴さんを弔いながら、ひっそりと生きてきたよ。

奏大が10歳になる時、まだ幼い奏大に総てを話した。

もう、夢操人としての操人家は私で終わりにすると。

奏大は、くりとそうたとして、普通に生きていきなさいと。

その時に、奏大が

「儀式をしてください」と言ったんだ。

じいじで終わりにするのかは自分に決めさせて欲しいと。

10歳の子がだよ。

奏大の意志を尊重して、儀式をした。

結果的には、記憶を失ってしまった」





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