第20話 式に緊張してたんじゃなくて

 おやじの運転で、助手席にはおふくろ。

後部座席の左側がいつもの俺の定位置。


ジジ様 俺のじいちゃんか……

会ったことない人。

いや、あるのか……

さっきの話だと10年前、10歳の時までは、会っていたのかな……

儀式をして 記憶を失ったって……

確かに、5年生くらいからしか思い出せない。

だけど、アルバムの写真を見たりして、あぁこんなことあったよな~なんて思ったりしてた。

幼稚園の卒園式も、小学校の入学式も、おやじとおふくろが一緒に写っていた。

俺は、おふくろと手をつなぎ 緊張したような顔をしていた。

式に緊張していたんじゃなくて、新しい両親に、緊張していたのか……



「儀式してないのに、チカラを発現したの?」

「えっ?」

考えこんでいて 聞いていなかった。

おやじとおふくろが、なにか俺に話していたのか。

「ごめん。聞いてなかった……」

「チカラ、いつから?」

「チカラ……夢に入ったのは……誕生日の日か、次の日か、かな?」

「誕生日……はたちの誕生日」

「やっばり、そうなのか……」

やっぱり……って?……

俺の実の父親、なおひろ様と言っていたか、10歳と20歳の時に儀式をしたけど、ダメで記憶を失ったって、そう言ってたよな……

10年に一度のチャンスなのか?

で、ダメだったら、その度に記憶を失うのか?

0歳から10歳までの記憶と、10歳から20歳までの記憶とじゃ、重みが全然違うだろ!

青春が全部消えちゃうなんて……

それはキツイな……


「もう、終わりにしようって、ジジ様とババ様が仰って……

直大様と千鶴様がお亡くなりになられて、お二人は本当に悲しみに打ちひしがれていらっしゃって。

奏大が10歳の儀式で記憶を失くした時に、もう終わりにしようってジジ様が私達に仰ったの。

直大様の様に、20歳で記憶を失くすなんて、かわいそうだから、奏大にはしなくていいって。

もう ゆめあやつりびととしての そうじん家は、私の代で終わりにして、奏大はくりと家の長男、ごくごく普通の一般市民として生きていけば善いと」

ごくごく普通の一般市民として……

「今まで、何回も引っ越ししてきたよなぁ。

ジジ様のご指示で、引っ越していたんだ。

奏大に危険が及ばないようにと。

奏大が大学に合格して、神奈川に引っ越すってなった時に、我々も共に神奈川へ行きますか?とジジ様にお伺いしたら、奏大には普通の大学生らしく、一人暮らしをさせてやれと言われた。

我々は、岡山に行くように言われたんだ。

本当に、もう、普通の大学生として、学生生活を楽しく過ごしてくれればいいって、そう思っていたよ」

「まさか、儀式もしてなくて、チカラが発現するなんて、思いもしなかったから」

「その儀式って、どんなやつなの?」

「そうね~。簡単に言うと、断食と、24時間不眠不休。その後に24時間眠り続ける。あとは、朝日を浴びることや、水行など、誕生日の前後で行うんだけど」

あれっ??

なんか、それ、普通に全部やったような??

水行ってゆうか、プールでメチャ泳いだだけだけど。温水プールだし。

儀式をしてる自覚は全くなかったけど、それ失敗してたら、記憶失くしてたの?

えーーーーーーっ!!!!怖っ!!!!

マジか!!あっぶな!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る