第17話 行ったことない場所

 実家って言ったけど、両親の暮らす家には初めて行く。


なんか俺、おやじの転勤で、あちこち引っ越しした。

今思うと、どうして?ってタイミング。

一学期終わって、夏休み中に突然引っ越しとかもあった。

貧乏な感じでもなかったから、夜逃げとかではなかったと思う。

小学生の時は、なんか高学年くらいしか思い出せないんだけど、写真を見たり、聞いたりしたのをあわせると、たぶん4ヶ所。

まともに3年間いられたのは、中学だけだな。

高校は、2ヶ所。

俺は大学に入る時に、一人暮らしをすることになって、それまで住んでいた石川から、神奈川県に引っ越した。

と、同時に両親は岡山に引っ越した。

去年は、なんだか忙しかったし、亜弥と遊んでいたりして、夏休みも年末年始も実家には帰らなかった。

そもそも、行ったことない場所に『帰る』ってゆう感覚じゃないし。

おやじとおふくろとは、ラインしたり、電話で話したりはよくするし、寂しくて顔が見たいって感じも全然なかった。


 初めて岡山に行くけど、とりあえず新宿から高速バスに乗った。

今の時代スマホさえあれば、どうにかたどり着けるもんだな。

最寄りの駅まで、おふくろが車で迎えに来てくれていた。

「奏大、突然でビックリしたよ~。もう、岡山に着てるとか。もう少し早く言ってよ~!」

おふくろは、ハンドルを握って前を向いたまま言った。

「わり~。なんか、突然思いたって来ちゃった」

「全然いいんだけど、お父さん今日は、夜勤だから、いないのよ」

「そうなんだ。まあ、2、3日はこっちにいるつもり」

「そう。ゆっくりしてきなさいよ」


実家は、築80年の古民家だって。

それを、リノベーションしたって。

外から見た感じと、中に入ったのとではすごく印象が違った。

改装とかリフォームって言い方じゃなくて、リノベーションって言い方がしっくりとした。

これは、誰の趣味なの?

今まで俺が暮らしてきた実家たちとは、全く違った感じ。

湘南のサーフショップみたい、とでも言うのか。70年代なのか、80年代なのか、わかんねーけど、古き良きアメリカ!!みたいなイメージ。

ジューク・ボックスってゆうの?

これは、インテリアとして置いてるのか?

壁には、外車のナンバープレートがいっぱい飾られている。

「誰の趣味?」

部屋をグルッと見渡しておふくろに聞いた。

「お父さんよ」

「へぇ~っ」

まぁ、おふくろの趣味じゃないとは思ったけど、

おやじの趣味って感じもなくて、とにかく意外だった。


夕飯 急に来たから、何もないよ。と、有り合わせの物で出してくれた。

ご飯とお味噌汁と、野菜炒めとサラダ。

おふくろの味付けは、相変わらずの薄味。

健康の為にはいいのかもしれないけど、ファストフード世代の俺には、本当になんも味ないけど?って感じ。

何にでもソースやマヨネーズをぶっかけてよく怒られた。

味ないけど、今日はこのまま食べることにした。

良く言えば、優しい味ってことだな。





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