第15話 魔法使いみたいな感じ

 次の日、夜になり田鍋泰人の夢に入ることにした。


やった!!

きたきた!

入れたぞ~!!

やっぱり、お互いの名前と顔がわかってないとダメなんだな。

逆に、名前と顔さえ認識されていれば、なんの関係性がなくても入れるってことだ。


おっ、ここは、テニスの試合会場。

デカい会場だな。

応援してますとか言ったけど、俺は全くテニスには興味ないし、田鍋泰人がなんの大会に出るのかも知らない。

でも、こうして夢に入らせてもらったんだから、せっかくだし、優勝しましたって夢にしようか。


テニスの試合って、スポーツニュースでチラッと紹介されてるのを見るくらい。

何点とったら勝ちになるのか、何セットとれば勝ちになるのか、とか 全然知らない。

ルールもよくわからないから、俺のシナリオは ざっくりと。

途中まで相手のペースで押され気味だったが、途中から一気に田鍋のペースになって快勝!!ってくらいの軽いシナリオで、あとはお任せします!

って感じ。

最終的に田鍋が勝ってくれれば、それでよし!!


夢の中にも観客が大勢いて、普通に応援している。

その人たちにも俺は見えていない。

俺は、透明人間みたいな感じかな。

すり抜けちゃうし。

観客席に座って見ていたが、ちょっと退屈になって、下のコートに降りてみた。

試合しているすぐ脇を歩いた。

ボールが俺の方にとんできて、俺の太もも辺りをすり抜けていった。

痛くもなんともない。

すり抜ける時も、なんの感覚もない。

口笛を吹きながら、ちょうど真ん中辺り、審判の人の高い椅子のところに来た時、前から人が歩いて来るのが見えた。

コートには、ボールを拾ったりするための少年たちが何人かいたけど、この人は全身黒い服で、なんてゆうのか、ハリーポッターに出てくる魔法使いみたいな感じ。

ロングコートなのか、マントみたいな?

フードをかぶっていて、口元も黒いマスクみたいものをしているのか、顔は目だけしか見えていない感じ。

その人は、立ち止まった。

なんだか、俺も立ち止まってしまった。

目が合ったような気がした。

俺のこと見えてるの?

って思った 次の瞬間、急にその人が俺の目の前に現れた。瞬間移動って感じで。

えっ!!!!


「ソウジンカ?」


ソウジンカって何?


「解!!!!」


大きな声で叫ぶと、手のひらを広げて俺の胸元を強く押した。

ダン!!と、もの凄い衝撃で突き飛ばされ、部屋の床にドン!と尻もちをついた。

痛ってーーーー!!!!

なんで?

なんで、すり抜けなかったんだ?

ってか、夢から無理やり押し出された。


なんだ?

なんなんだ……


田鍋の夢の中に、俺みたいに 夢に入れる人がいたのか?

俺のことが見えていた。

俺に触れることができた。

そして、強制的に追い出された……


じゃ、俺のシナリオはどうなった?

田鍋泰人は勝ったのか?

まだ夜中だったけど、眠ることが出来ずに朝になってしまった。


テレビをつけて、朝の情報番組を観てみた。


「次はスポーツです。

オーストラリア、メルボルンで行われている全豪オープンテニス予選に田鍋泰人選手が出場しました。

結果はストレート負け、田鍋選手惜しくも予選敗退となりました。」


予選敗退……

俺のシナリオだと、優勝するはずだったのに……

あいつに、シナリオ変えられたのか!!

誰なんだよ?あいつ!!

何者なんだ?


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