第10話 なんなんだ なんなんだよ……

 翔子は今、新横浜に住んでるんだって。

柊矢と電車で新横浜駅へ行った。

「ぺぺの前で待ちあわせようってさ」

なんだ?ぺぺって。

駅を出て、スマホを見ながら右側へ進んだ。

あれがぺぺか。

プリンスペペ。円柱型の建物で目立つ。

上を見上げて歩いていたら、

「柊矢~!操人~!」

と呼ばれて見ると、手を振りながら近づいてきた。

昨日の夢の、あの美人さん。

本当に、これが翔子なのか?

昨日のは、夢の中の翔子で、想像上の翔子だと思ってた。

実際、今 目の前にいる翔子は、昨日の夢の翔子だった。

中学の頃の面影もあるけど、大人っぽくなっている。

中学時代、すごい美人で学校でも目立つ存在だった。

しかも性格も良くて、優しくて、アイドル的存在。

柊矢がずっと翔子を好きだ好きだ言ってたから、俺はまぁなんの関心もないフリをしてたけど、

俺も、翔子のことは好きだった。

ってか、男子はみんな翔子が好きだったんじゃないかな。

いろんな人から告白されていたと思うけど、中学時代 翔子は誰とも付き合ったりしなかった。

だから、尚さら、みんなのアイドル!って感じだった。

その翔子が、柊矢と結婚するなんて聞いたら、同級生たち腰を抜かすんじゃないか?

「柊矢~!」

って、思いっきり抱きついて、翔子の方からキスをした。

わっ!

二人のキスは昨日夢の中でも見たけど、生で見んのはキツい!

「操人!久しぶり!変わらないね~!あ、でも大きくなった~!」

大きくなったって、おふくろみたいな言い方だな。


翔子行きつけの、創作居酒屋ってところへ歩いて行った。

ほんとに常連客らしく、マスターと女将さんが翔子に話しかけてきた。

「翔子ちゃん!珍しいね~!男の子と来るなんてさ~!」

「あ、マスター!女将さん!私の婚約者です!」って、柊矢を紹介した。

えーーーーっ!!!!って、めちゃ驚かれてる。

そうだろう、そうだろう。

一昨日までなんもなかった2人が、突然そうなってんだから。

お祝いにおごるよ~!って。


俺はまだ、未だにちょっと納得できてない。

こうやって、実際に柊矢と翔子を見ても、インチキ芝居な感じがしてしまう。

なんなんだ……

なんなんだよ……

マジで。


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