好奇心は猫を殺す。心も殺すことがある

「さてと」


 ゴブリンの死骸をそのままに……消えた!? いや、今はそれどころじゃない。俺は気配を殺して扉の近くに潜む。

 しばらくして違う部屋に行っていたゴブリンAが部屋に入ってくる。


「ゴブゴブブゴーー(開けたままだとあいつら逃げーー)」


 ゴブリンAが部屋に入り、数歩入ったところで先ほどと同じように瞬撃で首を跳ね飛ばす。

 うん、俺には隠密行動は向いていないな。結局、見つかって全てぶっ殺して進むって……ステルスゲーで一発クリアできる人ってすごいなぁ。


『ゴブリンウィザードを殺害しました。略奪を開始します』

『略奪しました。種族『ゴブリンウィザード』、種族スキル《魔力量増大》《魔力強化》《魔力操作》《属性魔法》、スキル《棒術2》《火属性魔法2》《風属性魔法2》《魔力操作2》を獲得しました』


 ま、ま、魔法スキル!? 今の魔法使うゴブリンだったの!? 危な! 不意打ちで殺せて助かった〜いや、マジで魔法スキルは嬉しいぞ。

 この世界において魔法とは魔法系の職業を持った人間に許された世界の法則に介入する術理ーーという話をギルドで学んだ。魔法を使えるやつは大体、貴族とかに召し抱えられるようだし、外で他の冒険者に出会う機会もなかったので、魔法をこの目で見たことはなかったが、まさか、初めて見るのがゴブリン(魔法は見ていない)になるとは……ま、これで俺も魔法が使えるわけだ。また、試してみるとしよう。

 に、してもだ。


「なんだ……この匂い…………甘ったるい匂い、気分悪くなる……ふむ、少し腐ったような匂い……魚っぽいのも……吐きそう…………マジで気分悪くなってくるな」


 本当、臭い。鼻が効くのをここまで憎んだには初めてだ。本当、ここにはなにがいるんだ?

 この部屋は転移部屋とは異なり、何故かさらにいくつか扉があり、部屋がある。

 む? 何か見覚えが……いや、あるわけないよな。それよりも……この部屋は異様に綺麗だな。異臭がこんなにするってのに。まるでゴミだけが消滅して、それに付随する匂いだけはその場に置いてるみたいな……ま、考えてもようわからん。無視しよう。

 俺は扉の一つに近づく。

 扉は内開きで……ドアノブは簡素だな。鍵などはついていないのか?

 俺が観察しようと少し動いた時、


「………………ぉ」

「ッ!?」


 忘れてた! ここには何かいるんだった!

 剣を構えながら扉から飛び退く。距離をとり、剣気を身体に身に纏わせ、臨戦態勢を整える。


「………………」


 なにも出てこないな。連中、餌をやると言っていたな。てことはペットか何か……なら、こちらをすぐさま襲ってくる可能性は低い……か? いや、わからんな。アリスの下に戻るか? なんだろう。それは良くない感じがする。

 本当になんなんだ? この嫌な予感は。こんな感じは初めてだ。殺気や命の危険ってわけでもなさそうだし……あの扉を開ければわかるか?

 若干の好奇心があったことは否めない。この時の判断を俺は軽く後悔することになる。俺は先程の扉を蹴開けた。

 好奇心は猫を殺す。猫ではなく心が殺されることもある。

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