諸悪の根源?

「では、これより、ダンジョンに行く。と言いたいところだがその前に」


 ギルマスがそこで言葉を切り、シーラさんが紙とペンを配る。

 なんだこれ?


「遺書を二枚、書いておけ。一枚は自分で、もう一枚は俺が預かる」


 ……思ったより大事なやつだった。周りを見ると全員何かしら書いている。

 だけど、俺には渡す相手がいないからなぁ。両親は行方不明だし、兄弟姉妹はいないし、何なら異世界に来てるから、知り合いも金もない。書く必要性がない。が、書いとくか。適当に寄付しといてください。よし。


「全員書き終えたな? では出発だ」


 



 ここはこっちでここはこっちだったな。


「よく、迷わずに進めるね……」


 森を歩いているとレオがそんなことを言う。


「ん? いや、ちゃんと目印付けてるし。ほら」


 木の幹につけておいた切り傷を指さす。


「え? こんな小さな傷を目印にしてるの?」

「そうだけど?」


 よく見えるね、と呟くレオを尻目にズンズン進む。


「それにしても……」

「ここは普段からこんなに魔物が少ないのかしら?」


 レオとエルザがふと疑問を口にした。

 そういえば、森に入ってからゴブリンはおろか魔物にすら会ってないな。


「いや、1ヶ月ぐらい前はもう少しいたはずだ」

「ダンジョンができて魔物が増えるどころか減っている……?」

「そんなの聞いたことないわよ……」


 レオとエルザがなんか悩んでいる。そんなにおかしいかなぁ? ま、たしかにおかしいか。増えてるはずなのに減ってるんだし。まるで何かを警戒してるみたいに外に出てない。まさか、とんでもなく強い奴がいるのか!?

 大体この辺で活動している冒険者はそんなにいないし、俺もそんなの見てないんだけどな…………あ


「ダンジョン以外にも警戒すべき何かがあるのかもしれないね」

「ええ、みんなも気をつけなさい」

「わかっている」

「はい……」

「わかったわ」


 ……気をつけるのはいいことだし。


「そういえば、あなたたちさっき何を話していたの?」


 アリスがふと思い出したように俺とレオに聞いてくる。


「途中から何を話しているのか聞こえなくなったのよね」


 あーアリスにも聞こえないようになってたんだな。

 視線でレオに話してもいいか問いかける。すると、小さく首を振った。言ってはダメなようだ。ならば、


「ちょっと、俺の剣技について話してただけだ。まだまだ未熟な剣だからすこし恥ずかしかったから結界張ってもらったのさ」

「ふーん」


 不服そうな顔だったがそれ以降特に何もなかったので納得してくれたのだろう。






「あそこだ」


 ついにダンジョンのある場所に着いた。


「魔物はいないみたいだね」

「……おかしいな。前来た時はゴブリンがいたんだが」

「まさか、こちらの動きが気づかれている?」


 レオが神妙な顔つきで考え事をしている。

 こちらの動きに気づいている、とまでは行かなくても何か森で異変があったことぐらいはわかるか? アサシンが帰ってこないわけだしな…………










 あれ? 大半の不可思議なこと俺が原因では?

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