出雲一刀流の謎

「君の家? 何を言っているんだ。これはオルテシアの初代王の剣技だろう?」

「は、え、はい?」


 コイツハナニヲイッテルンダ?

 俺の反応にあたりには何とも言えない空気が流れる。


「まさか知らなかったのかい?」

「あ、ああ。まだ、勇者が広めた剣技ってなら呑み込めたが……初代王?」

「なんだ、知ってるんじゃないか。勇者イズモは出雲一刀流の遣い手だよ?」

「……?」


 あー、こいつらは初代王が遺した出雲一刀流を母さんが習得したって考えてんのか?


「うーん、すまんが話はよくわからんが、初代王云々は知らないけど俺は出雲一刀流を使える」

「反応をみるにそうみたいだね」

「ん? じゃあ、なんでレオは使えるんだ?」

「え? ああ、それは僕がこの国の王族だからだよ?」

「へー、そうなんだ」


 そんなら使え……イマナント?


「王族?」

「そう。王族」


 王族かー


「王族!?」


 うぇ!? そうだったの!? とりあえず土下座しとこ。


「な、何してるの!?」

「えー、様々なご無礼許していただけると嬉しいです」

「そういうの良いから、頭を上げて!」

「はーい」


 起き上がりながら、ふと気づく。


「……そういうのって、こんなとこで言って良いものなのか?」

「あ、それはね。エルザ」

「勿論、張ってるわよ」

「エルザに遮音結界を張ってもらってるんだよ」


 なるほど。じゃあ、やっぱり、普通に知られちゃ困る感じなのね。


「……俺は?」

「君には色々聞きたいからね。後で言うことになるだろうから、先に、ね」

「まあ、後で俺も聞きたいことあるから……って! 私の喋り方は敬語の方が宜しでしょうか?」


 王族だし、やっぱり敬語じゃないと打首になるか!?

 俺の敬語を聞いた瞬間、レオは顔を顰め言い放つ。


「気持ち悪いから普通に喋って」

「わかった」


 こいつ、結構ひどいな。


「んで、その王子様がどうしたってこんなところに? ダンジョンなんて危険が危ないだろう?」

「何その言葉……ダンジョンが危険だからこそだよ。王族、貴族には国の有事の際には対応する義務があるからね。もっともそんなのがなくとも僕は対応するけどね」

「ふーん、なら、辺境伯も対応しないとダメなんじゃ?」


 辺境伯も貴族だし、なんなら目の前の男よりも動くべき人間だろう。


「あー、さっきも言ったけど、名目上は帝国の動きに警戒するから動かない。実態がどうであれ、帝国侵攻という有事に対応していることになってる上に辺境伯はダンジョンへの対応よりも国境付近の警戒の方が優先度が高い。僕が命令を出そうにも僕にそこまでの影響力はないからね……」


 最後の方は自嘲気味に行ったのが少し気になるな。ま、あんまり聞きすぎるのも悪いか。


「そういう理由ね。ところで、この後はどうするんだ?」

「え?」

「いや、俺の実力を見たかったんだろう? ここで終わりにするか? 俺は別に良いけど」


 俺は別に戦いが好きというわけでもないので、そっちの方がいいんだが。


「ああ、もちろん合格だよ。後方支援させるには惜しい実力だったよ」

「え? いやいや、俺、全く対応できていなかったじゃないか」


 嘘だろ。不合格になると思ってたのに!?


「いやいや、出雲一刀流の剣技を使えるほどの剣士が実力不足なわけないし、さっきは僕もムキになって、本気で動いちゃったし。君ならあれぐらいなら少しレベルを上げれば対応できるよ」


 と言いながら、エルザに結界を解くように指示しながら、俺の方に歩み寄ってくる。そして、俺の隣にくると耳元で囁いてエルザの方に向かう。


「リョウくんにもダンジョン探索に参加してもらうよ」


 レオのパーティが各々の返事をして、アリスだけはぶつくさ言いながらも話は進んでいった。

 それにしても、さっきのあいつの言葉、


「その気になれば対応できたでしょ、か」


 よくわかってるじゃないか。

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