八方塞がり……か
考えた結果、アサシンを取り込んだ時なので、おそらくはアサシンがダンジョン産の魔物でそれを奪ったことで言葉をも奪ったのではないか? という結論になった。
ダンジョンを発見した後、急いでネピアに戻ってきた。
「えーと」
いつも通り、綺麗な受付さんはすごい列……ギルマスもいなーーよし! シーラさんがいた!
「シーラさん!」
「あら、リョウさん。どうしましーー「ダンジョン見つけました」」
先ほどまで受付を口説いていた男、その男に殴りかかっていた男、隣接された酒場でで喚く者、その全てが黙り、俺に視線が集まる。
「詳しい話を」
「まとめると森に少し入ったところにダンジョンがあり、ゴブリンが巣食っていた、と」
「ええ、かなりの数でした。道中、上位種と交戦、ついでに他にも上位種がいました」
「上位種の種類はわかりますか?」
「これを」
アサシンの討伐部位を差し出す。
「……アサシンですか。少々まずいですね」
「ええ」
本当にまずい。これはーー
「おいおい、ダンジョンつってもたかがゴブリンだろ?」
「そうそう、あんな雑魚、いくらでも殺せる」
「ビビりすぎだろ。まあ、1ヶ月も引き篭もってた臆病者なら仕方ないか」
周囲にいたバカが俺を嘲笑う。
こいつらマジか? そんなことを考えていたら、バカの近くにいた他の冒険者がバカどもをボコボコにし始める。
「バカどもが。アサシンがいるってことはかなりの群れだぞ」
その通り。
ゴブリンは基本的に弱い。そりゃあ、一匹一匹は転生したての俺でも討伐できるぐらいには弱い。しかし、それは一匹相手ならだ。基本的に上位種が出始めるのは、十体を越え始めた群れからで、それでも戦士や魔法使いなどの基本的な進化だ。が、戦士や魔法使いが多くなり、どんどん、数を増やすことでゴブリンは別に必要でもないのにさらに進化先が分化ーーアサシンとか、森とかでは有用だから最初期からいてもおかしくないんだけどなぁ……ゴブリンの知能の限界か。ーーしていき、アサシンなどの少々特殊な種に進化する。
そして、大体この数ならクイーンやキングなどの上位種(繁殖力と戦闘力がかなり高い)がいる。
と、まあ、色々知っているように考えていたが、全部、ギルドの書庫で知った情報である。
「ーーということです。ダンジョンなので、その過程をすっ飛ばして生成された可能性もありますが、最悪、ダンジョンにはBランクの魔物がいます」
などと考えていたら、シーラさんが説明してくれたようだ。
「Bって……」
「ふがふが」
「もうダメだ、おしまいだぁ」
一人殴られすぎて喋れてないぞ!? それはさておき、Bランクだと普通に強い。この街には現状Bランク冒険者は一人いる。しかし、魔物のBランクとは、Bランク冒険者のパーティで対処可能、ということをしめしており、現状、この街にはBランクの魔物に対抗する術はない。騎士団もいるにはいるが、貴族様の護衛に忙しいため、援軍は望めそうにない。アルバートに関しても今は長期の護衛依頼で町を留守にしている。
「八方塞がり……か」
俺の呟きはギルドの喧騒にかき消された。
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