第32話 覚めぬ夜と明けぬ朝

ガーディが切り出した真の帰宅についてだったが、結局今日は無しだと言われ、仕方なく真は帰れないという連絡をしたいと


食事が終わって、真とルーの二人は友好を深めるために一緒に過ごせと部屋に入れられた。

最初に会話を始めたのは、ルーだった。

おずおずと切り出されたのは、真の年齢についてだった。

「ねえ、貴方歳は?」「…何歳だと思う」まるで合コンのような返しに、ルーは可笑しく思ったのか顔を少し綻ばせた。「ふふっ、16じゃないかしら。貴方かなり落ち着いているしね」「生憎と、14だ」「ええっ、流石に冗談でしょっ?」「ホントだぞ?」そして、案外とすぐに打ち解けた。ルーが会話を振れば、真がぶっきらぼうだがウィットを効かせた会話を入れてルーを笑わせる。とにかく会話が途切れず、次から次へと話題が増えていく。

生まれた国も、育ちも、年齢も、性別もバラバラだったがスパイに選ばれたというのもあってどこか自然とウマが合う。

そうして、段々と話題も消化していき、とうとう恋バナに発展した。

(琴音のこと話しても良いかもな)

想像以上に、真はルーに好感触を抱いたらしい。

「もしルーと先に会ってたなら、告白してたかもしれないな」

「もし…? ふふっ、貴方好きな人間がいるの!」

ルーからしてみれば、意外や意外。堅物というほどでもないが大人びている彼が告白しているという事実が興味深かった。クスリと笑いが溢れる。

「なっ、悪いかよ。それに片想いだよっ」バツが悪そうに眉を動かすのも、しかも告白していないのが余計に面白い。大人びているのだから、もう付き合っているものだと思っていたが。彼って案外、純情というより

「意外と子供ぽっいのね。ね、彼女の名前って何?」

「名前は…言えない。子供ぽくて悪かったなっ」

そうして、二人の夜は続いた。


さて、肝心の琴音というと、それはそれは酷い状態だった。

「………わたしのせいだ……もし真さんが、……たら………」 

いつも明るくフワリと笑うかんばせは、その評価を一転させ、暗く新月もかくやといった黒黒としたものだった。


「あの、先生。琴音の様子本当にヤバくないですか?」

「……言わないでください。真…一体何処に行ってるんですか……帰ってきたらビンタでもされた方が良さそうです」


愛菜こと先生と真に慕われる 兄は家に帰ってきた琴音が怒りで修羅を背負っているのを見て、すぐさま真がクソボケなことをしたと悟った。その様子が暫くして反転したのか闇黒を纏い始めてからは、その意思は強くなった。


いつもは、お姉ちゃんお姉さんと琴音を慕う子供たちもあまりの変貌に彼女に近づけず二人に泣きついてきたくらいだ。


ブツブツと途切れがちに、静かに淡々と内容が変わらず同じことを呟く姿はまるで幽鬼のようだ。


プルルル

「ん?先生、電話鳴ってないか」「こんなときに、……真ですか」

グリン

琴音が顔を凄まじい勢いで電話に向ける。黒黒とした瞳は今にも電話を奪わんとして先生の手の内を睨んでいる。

圧力の強さに冷や汗を掻きながら、通話ボタンを押して琴音に聞こえるようにスピーカーにする。

「真、こんな時間まで何処に「ごめん。帰れない」ツーツー


虚しい通話終了の音が孤児院のリビングにこだまする。琴音を除いて、通話を聞いた全員の目が死んだ。

「最悪です」「おわぁぁ、真っ絶対帰ってくるなよ、死ぬぞ!?」


琴音は完璧に闇堕ちした。

「……ふ、ふふ……そっかあ…そうすれば良かったんだ……」


Qなんで、ヒロインが闇堕ちしてんの?

A主人公がクソボケだから?たぶん




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