第一章エピローグ後 真視点
「ねえ、鏡野さん次は何処に行きます?」
「次はあそこのカフェに寄ろうか。そろそろ有原さんも喉も渇いてきたんじゃない?」
「ふふ、そうですね。お茶しましょうか」
日曜日正午の東京駅前、一組の男女が手を握りながらデートをしていた。
真と琴音だ。
昨日の約束から、真は琴音と一緒に電車に乗って東瀛首都 東京に来ていた。
目的は勿論、琴音のデートだ。
エスコートして欲しいと望んだ琴音も、真が自分の手を引いて街を連れ歩いてくれることに満足気だ。
といっても、真の内心は冷や汗でさながら海ができているくらいだ。
理由は単純。真に、恋人ができた経験なんてないからだ。
正確には、彼氏と彼女というガワを被っただけの恋人でない恋人ならいたことがあるが、好きだよと言い合うだけで何もしなかった。それは、もう恋人とは違うだろう。実際、半年と持たず自然と距離がひらいて別れた。
そんなわけで今、真は焦っている。
(本当に、無理。何があったら俺なんかが琴音と、あのヒロインと一緒にデートすることになんだよ!?しかも、しかも無茶苦茶なほど可愛いしさぁ!?)
無論、琴音の私服姿にだ。
いつもは、長くサラリと風に揺れるロングの黒髪は、軽くまとめ上げられてハーフアップにされいる。また、真がよく目にする彼女の私服姿は具体的にカジュアルな着こなしだが、今日は打って変わって水色のシャツワンピースに手には白のハンドバッグ。
正直に言って、デート精神的に15歳以下の真には彼女は余りにも可愛すぎて刺さった。真の精神は尊死してもいいレベルの尊さとヒロインを楽しませるプレッシャーという天国と地獄に両半身が浸かっている状態だ。
そんな訳で、真は琴音と手を繋ごうものなら手汗を気にしてしまうほど意識が如何に彼女を不快にさせないで楽しませられるかの一点に絞っている。
ちなみに二人とも、どっちもどっちで自分を卑下している。
だからこそ
(うわ、完全に気障な台詞だよ。やば、気持ち悪く思われてないか俺?いやいや、思われてるよ絶対。せめて、今日の費用は全額俺が持とう。稼いでるし使い所としていいよな?)
(凄いなぁ、私のことにしっかり歩幅を合して歩いてくれるし車道の方を歩いてくれてる。優しいしっかりした人だな…私なんかと釣り合わないくらい頭も良いし、もういやになっちゃう。せめて不快にさせないように…今更かな……)
こうして、内面がすれ違う。
けれどそれを表に出さないから、
「じゃ、受け付けはやってくるから。そうだ、琴音は何飲みたい?せっかくだしさ俺が奢るよ」優しげな顔で気遣いを見せて、真は恋人との逢瀬の楽しさからくる微笑みを浮かべる。(だぁー、気障すぎる無理無理無理)
「いいんですか?」想定していなかった気遣いに彼女は目をパチリとする。(駄目だな。気を遣わせちゃった。うう、せめて笑顔笑顔。嬉しいと感謝を伝えないと)
「勿論、楽しいし。何より喜ぶ顔が見たいから」「ありがとうございます」「こちらこそ」互いに綻ぶ笑顔で感謝を伝えあう。
そうして、二人でゆっくりと席に座って、真はコーヒーを一口飲んで香りを楽しみ、琴音はそれを面白いように眺める。そして彼女が頼んだパンケーキをゆっくり食べるのを見て、彼は微笑む。
そして、互いの視線が交差して思わず笑ってしまう。
そんなふうな感じなのを繰り返してこの日のデートは終わった。
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